お金の基本/第 9 回(全 12 回)
株式は不安。投資信託なら安心? 中身に株式が入っていても?
会社に出資する株式、お金を貸す債券、それらを組み合わせて運用する投資信託の違い

「株式は値下がりが心配。投資信託なら安心」。そう聞くと、投資信託のほうが安全に思えるかもしれません。でも、投資信託の中身にも株式が入っているとしたら、値下がりの心配はなくなるのでしょうか。
名前だけで、安心かどうかは分かる?
株式や債券、投資信託を買うときは、「どれくらい増えると見込めるか」と「どれくらい減ることがあるか」を一緒に見ます。さらに、使いたいときに現金に戻せるかも大切です。この三つの見方を、それぞれ収益性・安全性・流動性と呼びます。
ただ、「株式」「債券」「投資信託」と名前を並べても、まだ比べられません。とくに投資信託は、中身に株式も債券も入る仕組みです。何を買っているかを確かめるため、まずは会社とお金を出す人の関係から見てみましょう。
同じパン屋にお金を出しても、約束が違う
パン屋を営む会社が、新しい店を開くためにお金を集めるとします。ここでは仕組みを見るため、会社が新しく発行する株式か債券を買って、10万円を出す二つの場合を考えます。金額と条件は仮のもので、税金や手数料は考えません。
| 10万円の出し方 | 会社との関係 | お金を受け取る仕組み |
|---|---|---|
| 株式を買う | 会社の持ち主の一人になる | 利益の一部を受け取ったり、株式を売ったりする |
| 債券を買う | 会社にお金を貸す | 決められた利息を受け取り、期限にお金を返してもらう |
同じ会社に同じ10万円を渡しても、株式を買う人と債券を買う人では、会社との約束が違います。その違いが、受け取れるお金や、損をする場面にもつながります。
株式を買って会社の持ち主の一人になることを「出資」といい、その人を「株主」と呼びます。パン屋が利益を出せば、その一部を株主へ配ることがあります。これが「配当」です。ただし、金額は決まっておらず、配当がない場合もあります。
お店が人気になり、これからも成長しそうだと考える人が増えれば、株式の値段が上がることもあります。買ったときより高く売れれば利益になりますが、逆に安くしか売れなければ損失です。会社に「10万円を返して」と言えば返してもらえる仕組みではありません。
一方、債券は、お金を返す期限や利息などの条件を決めて発行します。たとえば「毎年2,000円の利息を払い、5年後に10万円を返す」という約束です。パン屋の利益が大きく増えても、この例の利息は2,000円のままです。
会社が発行する債券は「社債」と呼ばれます。国がお金を借りるために発行する「国債」も債券の仲間です。株式は会社の成長による利益を期待する出資、債券は決めた条件での支払いを約束してもらう貸付です。
返してもらえる約束があるなら、債券は安心?
約束があっても、パン屋の経営が行き詰まれば、利息や借りたお金を払えなくなることがあります。「返す約束があること」と「必ず返せること」は別です。貸す相手に支払う力があるかを確かめる必要があります。
また、5年後に返してもらう約束でも、2年後にお金が必要になるかもしれません。期限を待たずに債券を売る場合、そのときの値段で買ってもらいます。10万円で買った債券が、10万円で売れるとは限りません。
値段が下がるだけでなく、買い手が見つかりにくくなる場合もあります。冒頭の「現金に戻しやすいか」という見方は、ここで役立ちます。利息の額や返済の約束に加えて、途中で使いたくなったときの条件も見ておきます。
では、投資信託では何を買っている?
ここまでの例では、パン屋一社の株式か債券を買いました。ほかの会社にもお金を分けたいと思っても、一社ずつ調べて買うのは手間がかかります。手元の金額では、買える数にも限りがあるでしょう。
そこで、多くの人から集めたお金をまとめ、専門家が株式や債券などを買って運用する仕組みがあります。これが「投資信託」です。投資する人は、そのまとまりの一部を持ち、運用で生じた利益も損失も、出したお金に応じて受け持ちます。
たとえば、パン屋だけでなく、鉄道会社や食品会社などの株式を買う投資信託があれば、少額でも複数の会社に間接的に投資できます。自分で一社ずつ株式を買う代わりに、それらをまとめて運用する商品を買うわけです。
投資信託は、株式や債券と無関係な「もっと安全な投資先」ではありません。 株式を中心に持つもの、債券を中心に持つもの、両方を組み合わせるものなどがあり、何を持つかで値動きが変わります。
専門家に任せても、値下がりはする?
株式を中心に持つ投資信託なら、その株式の値下がりは投資信託の値段にも影響します。何社かに分けていても、多くの会社の株式が一緒に下がることはあります。専門家に任せたからといって、買った金額が守られるわけではありません。
同じ「投資信託」でも、幅広い業種の会社に投資するものと、一つの業種に集中するものでは、値動きの原因や大きさが違います。外国の資産を持つ場合には、円との交換比率の変化も影響することがあります。
だから、「投資信託だから安心」と決めず、まずは中身を確かめます。商品の説明書である「目論見書(もくろみしょ)」には、投資する対象やリスク、費用、現金に戻すときの条件が書かれています。運用を任せる費用もかかるので、利益の見込みと合わせて確認します。
財部教授の30秒チェック
投資信託の商品説明を読むときは、次の三つを探してみてください。
- 中身は何か。株式か債券か、どの国や地域に投資するのか。
- 何が起きると値下がりするのか。投資先が一つの業種などに偏っていないか。
- 費用はいくらか。売却や解約を申し込んでから、お金を受け取るまで何日かかるか。
すぐに引き出せる預金と同じつもりでいると、支払いの日に間に合わないことがあります。中身と条件を確認してから、そのお金の使い道に合うかを考えます。
今日の研究結果
株式は会社への出資、債券は国や会社への貸付。投資信託は、集めたお金で株式や債券などを買って運用する仕組みでした。
投資信託という名前だけでは、株式より安心かどうかは分かりません。商品名から一歩進んで、何に投資しているかを見る。 そこから、期待できる利益も、値下がりする理由も確かめられます。

