財部(たからべ)教授のお金の研究室

お金の基本/第 9 回(全 12 回)

株式は不安。投資信託なら安心? 中身に株式が入っていても?

会社に出資する株式、お金を貸す債券、それらを組み合わせて運用する投資信託の違い

2026年9月21日に公開約6分で読めます

「株式は値下がりが心配。投資信託なら安心」。そう聞くと、投資信託のほうが安全に思えるかもしれません。でも、投資信託の中身にも株式が入っているとしたら、値下がりの心配はなくなるのでしょうか。

名前だけで、安心かどうかは分かる?

株式や債券、投資信託を買うときは、「どれくらい増えると見込めるか」と「どれくらい減ることがあるか」を一緒に見ます。さらに、使いたいときに現金に戻せるかも大切です。この三つの見方を、それぞれ収益性・安全性・流動性と呼びます。

ただ、「株式」「債券」「投資信託」と名前を並べても、まだ比べられません。とくに投資信託は、中身に株式も債券も入る仕組みです。何を買っているかを確かめるため、まずは会社とお金を出す人の関係から見てみましょう。

同じパン屋にお金を出しても、約束が違う

パン屋を営む会社が、新しい店を開くためにお金を集めるとします。ここでは仕組みを見るため、会社が新しく発行する株式か債券を買って、10万円を出す二つの場合を考えます。金額と条件は仮のもので、税金や手数料は考えません。

10万円の出し方 会社との関係 お金を受け取る仕組み
株式を買う 会社の持ち主の一人になる 利益の一部を受け取ったり、株式を売ったりする
債券を買う 会社にお金を貸す 決められた利息を受け取り、期限にお金を返してもらう

同じ会社に同じ10万円を渡しても、株式を買う人と債券を買う人では、会社との約束が違います。その違いが、受け取れるお金や、損をする場面にもつながります。

株式を買って会社の持ち主の一人になることを「出資」といい、その人を「株主」と呼びます。パン屋が利益を出せば、その一部を株主へ配ることがあります。これが「配当」です。ただし、金額は決まっておらず、配当がない場合もあります。

お店が人気になり、これからも成長しそうだと考える人が増えれば、株式の値段が上がることもあります。買ったときより高く売れれば利益になりますが、逆に安くしか売れなければ損失です。会社に「10万円を返して」と言えば返してもらえる仕組みではありません。

一方、債券は、お金を返す期限や利息などの条件を決めて発行します。たとえば「毎年2,000円の利息を払い、5年後に10万円を返す」という約束です。パン屋の利益が大きく増えても、この例の利息は2,000円のままです。

会社が発行する債券は「社債」と呼ばれます。国がお金を借りるために発行する「国債」も債券の仲間です。株式は会社の成長による利益を期待する出資、債券は決めた条件での支払いを約束してもらう貸付です。

返してもらえる約束があるなら、債券は安心?

約束があっても、パン屋の経営が行き詰まれば、利息や借りたお金を払えなくなることがあります。「返す約束があること」と「必ず返せること」は別です。貸す相手に支払う力があるかを確かめる必要があります。

また、5年後に返してもらう約束でも、2年後にお金が必要になるかもしれません。期限を待たずに債券を売る場合、そのときの値段で買ってもらいます。10万円で買った債券が、10万円で売れるとは限りません。

値段が下がるだけでなく、買い手が見つかりにくくなる場合もあります。冒頭の「現金に戻しやすいか」という見方は、ここで役立ちます。利息の額や返済の約束に加えて、途中で使いたくなったときの条件も見ておきます。

では、投資信託では何を買っている?

ここまでの例では、パン屋一社の株式か債券を買いました。ほかの会社にもお金を分けたいと思っても、一社ずつ調べて買うのは手間がかかります。手元の金額では、買える数にも限りがあるでしょう。

そこで、多くの人から集めたお金をまとめ、専門家が株式や債券などを買って運用する仕組みがあります。これが「投資信託」です。投資する人は、そのまとまりの一部を持ち、運用で生じた利益も損失も、出したお金に応じて受け持ちます。

たとえば、パン屋だけでなく、鉄道会社や食品会社などの株式を買う投資信託があれば、少額でも複数の会社に間接的に投資できます。自分で一社ずつ株式を買う代わりに、それらをまとめて運用する商品を買うわけです。

投資信託は、株式や債券と無関係な「もっと安全な投資先」ではありません。 株式を中心に持つもの、債券を中心に持つもの、両方を組み合わせるものなどがあり、何を持つかで値動きが変わります。

専門家に任せても、値下がりはする?

株式を中心に持つ投資信託なら、その株式の値下がりは投資信託の値段にも影響します。何社かに分けていても、多くの会社の株式が一緒に下がることはあります。専門家に任せたからといって、買った金額が守られるわけではありません。

同じ「投資信託」でも、幅広い業種の会社に投資するものと、一つの業種に集中するものでは、値動きの原因や大きさが違います。外国の資産を持つ場合には、円との交換比率の変化も影響することがあります。

だから、「投資信託だから安心」と決めず、まずは中身を確かめます。商品の説明書である「目論見書(もくろみしょ)」には、投資する対象やリスク、費用、現金に戻すときの条件が書かれています。運用を任せる費用もかかるので、利益の見込みと合わせて確認します。

財部教授の30秒チェック

投資信託の商品説明を読むときは、次の三つを探してみてください。

  1. 中身は何か。株式か債券か、どの国や地域に投資するのか。
  2. 何が起きると値下がりするのか。投資先が一つの業種などに偏っていないか。
  3. 費用はいくらか。売却や解約を申し込んでから、お金を受け取るまで何日かかるか。

すぐに引き出せる預金と同じつもりでいると、支払いの日に間に合わないことがあります。中身と条件を確認してから、そのお金の使い道に合うかを考えます。

今日の研究結果

株式は会社への出資、債券は国や会社への貸付。投資信託は、集めたお金で株式や債券などを買って運用する仕組みでした。

投資信託という名前だけでは、株式より安心かどうかは分かりません。商品名から一歩進んで、何に投資しているかを見る。 そこから、期待できる利益も、値下がりする理由も確かめられます。

教授のコメント

投資信託の商品説明を一つ開いて、「何に投資するか」を探してみてください。株式か債券か、どの国や地域か。商品名だけでは分からなかった中身が見えてきます。

次の回第 10 回 長期・分散・積立を守れば、お金は減らない? 3 つの言葉が防ぐものと防げないもの三つの言葉がそれぞれ何のための方法で、何は防げないのかを分けて見る
全 12 回の目次
  1. 第 1 回残高 10 万円。家賃と引き落としを引いたら、使えるお金は 5,000 円?
  2. 第 2 回月給 25 万円なのに、振り込まれたのは約 20 万円。5 万円はどこへ消えた?
  3. 第 3 回3 万円の靴を「月々 5,000 円」で。何回払って、手数料はいくら?
  4. 第 4 回年 15% なら、5 年で 75% 増える? 単利と複利で 10 万円を比べる
  5. 第 5 回銀行が貸した 80 万円は、誰のお金? 預金が貸し出しで生まれる仕組み
  6. 第 6 回来年の引っ越しに使う 30 万円。それまで投資に回しても大丈夫?
  7. 第 7 回1 年間、保険料を払ったのに何ももらえない。それは損だったのか?
  8. 第 8 回「年 5%」は約束ではない。もっと増える投資を選べばいいのか?
  9. 第 9 回株式は不安。投資信託なら安心? 中身に株式が入っていても?
  10. 第 10 回長期・分散・積立を守れば、お金は減らない? 3 つの言葉が防ぐものと防げないもの
  11. 第 11 回同じ 10 万円の利益なのに、約 2 万円の税金を払う人と払わない人がいる。NISA と iDeCo の違い
  12. 第 12 回「元本保証で年 20%」。登録番号も載っている。それなら安心してお金を渡せる?

出典

  • 日本取引所グループ「株主とは?」。出資と株主の関係、配当、株価の変動、会社への払戻し請求ではなく売却で換金する仕組みを参照。2026-09-21 に本文確認
  • 日本証券業協会「個人向け社債の特徴やリスク、価格情報の入手方法」。会社が発行する債券、元利金が支払われない可能性、途中売却時の値下がりや売りにくさを参照。パン屋と金額・利息・期間は説明用の仮定で、実際の商品ではありません。2026-09-21 に本文確認
  • 資産運用業協会「投資信託とは」。資金を集めて運用する仕組み、投資額に応じた損益の帰属、元本が保証されないことを参照。2026-09-21 に本文確認
  • 資産運用業協会「商品を選択する際のポイント」。安全性・収益性・流動性、運用資金の目的、目論見書で投資対象や換金条件を確かめる考え方を参照。2026-09-21 に本文確認

本文の制度の数値は 2026-09-21 に確かめたものです。改定されることがあるので、申込や手続きの前に公式の記載をご確認ください。

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