財部(たからべ)教授のお金の研究室

お金の基本/第 8 回(全 12 回)

「年 5%」は約束ではない。もっと増える投資を選べばいいのか?

「年5%」の見込みと結果の振れ幅を、お金を使う時期と合わせて考える

2026年9月20日に公開約5分で読めます

10万円の貯金が、一年後に10万1,000円になりました。でも、100円だったものが105円になっていたら、前よりたくさん買えるでしょうか。

お金は増えた。買える数は?

貯金を全部使って、同じ品物を買うとします。前書きの金額で、買える数を比べてみましょう。ここからの金額や利率は説明のための仮定で、税金や手数料は考えません。

比べるもの 今 一年後
貯金の額 100,000円 101,000円
品物1個の値段 100円 105円
買える数(端数切り捨て) 1,000個 961個

貯金は1,000円増えたのに、買える数は39個減りました。お金は1%増えましたが、品物の値段は5%上がったからです。貯金が増えていても、物価の上がり方によっては、以前と同じだけ買えないことがあります。

では、物価より高く増えそうなものを選べば解決するのでしょうか。たとえば「年5%程度のリターンが期待される投資」です。「リターン」とは、投資によって得られる利益や損失のことです。ここで大切なのは、「増えそう」と「増えると決まっている」は違うということです。

同じ「5%」でも、約束と見込みは違う

まず、10万円を預けると、一年後に必ず10万5,000円になる場合を考えます。比較のための仮の話ですが、この条件なら「一年で5%増える」と言えます。受け取る金額が決まっているからです。

一方、「年5%程度のリターンが期待される」という説明は、運用によってそれくらいの利益を見込んでいる、という意味です。一年後の金額が決まっているわけではありません。

たとえば、10万円を投資した結果、ある年には12万円になることも、別の年には9万円になることもあります。これは値動きの例で、必ずこの範囲に収まるという意味ではありません。

同じ「5%」でも、約束された数字と、期待される数字では意味が違います。 期待されるリターンが5%でも、実際の結果はそれを上回ることも、下回ることも、損失になることもあります。長く続ければ必ず年5%になる、という約束でもありません。

つまり、「年5%」という見込みだけでは、お金を使うときにいくら手元にあるかは分かりません。そこで、もう一つ見ておきたいのが、結果の振れ幅です。

結果の振れ幅を「リスク」と呼ぶ

10万円が12万円になれば、リターンはプラス2万円。9万円になれば、マイナス1万円です。このような結果がどれくらい上下に振れるかを、投資では「リスク」と呼びます。

ふだんは「危険」という意味で使う言葉ですが、ここでは損をする可能性だけを指すのではありません。予想より大きく増える場合も含めて、結果のばらつきに注目します。一年後の金額がほぼ決まっているものに比べ、大きく増えることも減ることもあるものは、リスクが大きいといいます。

一般に、高いリターンを期待する投資では、大きな振れ幅も受け入れる必要があります。ただし、リスクが大きければ必ず大きな利益を得られるわけではありません。大きく減ったまま終わることもあります。

だからこそ、期待されるリターンと、結果の振れ幅は一緒に見る必要があります。 「どれくらい増えると見込まれているか」に加えて、「うまくいかなかったら、どれくらい減ることがあるか」も確かめます。

では、その振れ幅をどこまで受け入れられるでしょうか。同じ1万円の値下がりでも、困る度合いは、そのお金をいつ使うかで変わります。

来月使う10万円と、10年間使わない10万円

来月の家賃に使う10万円を投資して、支払いの日に9万円になっていたら、1万円足りません。いずれ値上がりするかもしれなくても、家賃の支払いは待ってくれません。近く使うお金では、増やすことより、必要な額を使う日に用意できることが大切になります。

一方、10年間使う予定のない10万円なら、値下がりしても、その日の支払いのために売る必要はありません。値動きを待てる分、来月使うお金よりも振れ幅を受け入れやすくなります。

同じ投資でも、使う時期によって、受け入れられるリスクは変わります。 ただし、待てば必ず元に戻るとは限りません。使うまでに時間があることに加えて、減っても生活や将来の予定に無理が出ない金額かどうかも考えます。

「年5%が期待されるから、この10万円を投資しよう」と決める前に、その10万円の使い道を思い出してみてください。増やしたい気持ちが同じでも、来月の家賃と、当面使わないお金では、選び方が変わります。

財部教授の30秒チェック

「年○%」という数字を見かけたら、次の三つを確かめてみてください。

  1. その数字は、約束された利率か、期待されるリターンか、それとも過去の実績か。
  2. 結果はどれくらい振れるのか。損失になる場合も確認したか。
  3. そのお金はいつ使うのか。減っていたら、予定している支払いに困らないか。

過去の実績は、すでに起きた結果です。それも、これから同じだけ増える約束にはなりません。数字の意味を確かめたうえで、振れ幅と自分の予定を照らし合わせます。

今日の研究結果

物価の上昇に備えて、もっとお金を増やしたい。そう考えたときも、期待されるリターンだけでは投資先を選べません。

どれくらい増えると見込めるかと、どれくらい結果が振れるかを、一緒に見る。 そのうえで、自分がお金を使う時期までに、その振れ幅を受け入れられるかを考えます。

教授のコメント

お金を増やす方法を調べるときは、「どれくらい減ることがあるか」も確かめてみてください。投資信託なら、商品説明の「投資リスク」の欄に、過去の値動きの幅が載っています。その金額で、予定している支払いに足りるかを考えると、自分にとってのリスクが見えてきます。

次の回第 9 回 株式は不安。投資信託なら安心? 中身に株式が入っていても?会社に出資する株式、お金を貸す債券、それらを組み合わせて運用する投資信託の違い
全 12 回の目次
  1. 第 1 回残高 10 万円。家賃と引き落としを引いたら、使えるお金は 5,000 円?
  2. 第 2 回月給 25 万円なのに、振り込まれたのは約 20 万円。5 万円はどこへ消えた?
  3. 第 3 回3 万円の靴を「月々 5,000 円」で。何回払って、手数料はいくら?
  4. 第 4 回年 15% なら、5 年で 75% 増える? 単利と複利で 10 万円を比べる
  5. 第 5 回銀行が貸した 80 万円は、誰のお金? 預金が貸し出しで生まれる仕組み
  6. 第 6 回来年の引っ越しに使う 30 万円。それまで投資に回しても大丈夫?
  7. 第 7 回1 年間、保険料を払ったのに何ももらえない。それは損だったのか?
  8. 第 8 回「年 5%」は約束ではない。もっと増える投資を選べばいいのか?
  9. 第 9 回株式は不安。投資信託なら安心? 中身に株式が入っていても?
  10. 第 10 回長期・分散・積立を守れば、お金は減らない? 3 つの言葉が防ぐものと防げないもの
  11. 第 11 回同じ 10 万円の利益なのに、約 2 万円の税金を払う人と払わない人がいる。NISA と iDeCo の違い
  12. 第 12 回「元本保証で年 20%」。登録番号も載っている。それなら安心してお金を渡せる?

出典

  • 日本取引所グループ「ライフプランとお金①~金融商品の3つの特徴/リスクとは~」。リスクを「危険」ではなくリターンの振れ幅として捉える説明と、リスクとリターンがつり合うという説明を参照。本文の金額と利率は説明のための仮定で、実際の商品や将来の値動きを示すものではありません。2026-09-21 に本文確認
  • 資産運用業協会「商品を選択する際のポイント」。お金の目的や運用できる期間に応じて、取れるリスクを整理する考え方を参照。2026-09-21 に本文確認
  • 日本証券業協会制作・J-FLEC掲載「インフレリスク」。預金などの増え方より物価の上昇が大きいと、お金の値打ちが目減りする考え方を参照。2026-09-21 に本文確認

本文の制度の数値は 2026-09-21 に確かめたものです。改定されることがあるので、申込や手続きの前に公式の記載をご確認ください。

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