お金の基本/第 1 回(全 12 回)
残高 10 万円。家賃と引き落としを引いたら、使えるお金は 5,000 円?
口座残高と支払い予定から、自由に使えるお金を考える

お金の研究室へようこそ。案内役の財部です。給料や買い物、貯金のこと。身近なのに、考え始めると分からなくなることがありますね。ここでは暮らしの中の疑問を一つずつ一緒に確かめていきます。
銀行口座に 10 万円あります。欲しかった 3 万円の靴を見つけました。さてこの靴は買っても大丈夫でしょうか。
「もちろん。買っても 7 万円残るし」と思った人。今日はその「7 万円残る」を少し疑ってみましょう。
実はこの人が今ほんとうに自由に使えるお金は、5,000 円しかありません。 なぜでしょう。
10 万円あるのに、使えるのは 5,000 円?
今日は 15 日。給料日は 25 日です。銀行のアプリを見ると、残高は 10 万円。
でもこの 10 万円のうち、すでに使い道が決まっているお金があります。金額は説明のための例です。
| これから必要なお金 | 金額 |
|---|---|
| 20 日に引き落とされるカード代 | 30,000 円 |
| 22 日に引き落とされる家賃 | 40,000 円 |
| 給料日までの食費・交通費 | 15,000 円 |
| 来月の旅行のために残すお金 | 10,000 円 |
| 合計 | 95,000 円 |
10 万円から 9 万 5,000 円を引くと、残るのは 5,000 円です。 銀行には 10 万円あります。でもそのうち 9 万 5,000 円は、もう使い道が決まっています。
「あるお金」と「使えるお金」は違う
口座にあるお金 = 自由に使えるお金ではありません。
たとえば家賃の 4 万円。まだ銀行口座には残っています。だから数字だけを見れば「自分のお金」に見えます。でも 22 日になれば大家さんへ払うお金です。
カード代の 3 万円も同じ。旅行用の 1 万円も「来月の楽しみのために残しておこう」と決めたなら、今日の買い物には使わない方がいいお金です。つまり 10 万円という残高の中には「もう使い道が決まっているお金」が混ざっています。
10 万円という残高を、そのまま「使える 10 万円」と考えないことが大切です。家賃、カード代、給料日までの食費や交通費、旅行のために残すお金。使い道が決まっているお金を分けて考えると、今自由に使えるのは 5,000 円だと分かります。
でも給料日になればまたお金が入るよ?
そう思うかもしれません。確かに 25 日には給料が入ります。問題は家賃の引き落としが 22 日だということです。25 日に入ってくるお金では 22 日の支払いはできません。
お金を考えるときは、金額だけでなく「いつ入って、いつ出ていくのか」も大切です。
- 15 日 残高 10 万円
- 20 日 カード代 −3 万円
- 22 日 家賃 −4 万円
- 25 日 給料 +○万円
という順番です。「今月全体では払えそう」でも支払う日に口座にお金がなければ払えません。 カレンダーを見るように、お金の予定も時間順に見る。これだけでもお金の管理はかなり分かりやすくなります。
小さな出費が意外と忘れやすい
もう一つ忘れやすいものがあります。食費や交通費です。家賃 4 万円は覚えていても、コンビニで 800 円、電車で 600 円、昼ごはんに 1,000 円といった出費は忘れがちです。洗剤が切れて 700 円、友達と出かけて 2,000 円という支払いもあります。
こうした支払いは一回ずつ見ると小さく感じます。でも給料日まで 10 日あれば何度も発生します。だから「大きな支払いを払えるか」だけでは足りません。 その後も生活できるかまで考える必要があります。今回食費や交通費として 1 万 5,000 円を残したのはそのためです。
いくら残せばいいか分からなければ、最近 1 週間のカードの利用明細(カードで買ったものと金額の一覧)やレシートを見てみると、だいたいの感覚が分かります。
クレジットカードはさらに分かりにくくする
ここで少しやっかいなのがクレジットカードです。3 万円のものを現金で買えば、その場で 10 万円は 7 万円に減ります。ところがカードなら、買った直後も銀行口座は 10 万円のままです。見た目は何も変わりません。
でも実際には「来月 3 万円払います」という約束が増えています。つまり銀行残高には、これからカード代として払う予定のお金まで含まれていることがあります。これがカードを使うときに見落としやすいところです。銀行アプリだけを見て「まだ 10 万円ある」と思っていると、カードで使った分までまだ自由に使えるように見えてしまいます。
だからカードを使っている人は、銀行残高とカードの利用額をセットで見る。
じゃあ 3 万円の靴は買ってはいけないの?
いいえ。今日の話は「欲しいものを我慢しましょう」という話ではありません。今回分かったのは「今日買うと困る」ということだけです。
次の給料が入ったあと、家賃やカード代、生活費などを考えても、靴に使える 3 万円が残るなら、そのとき買えばいい。一度に 3 万円を用意できなければ、今月 1 万円、来月 1 万円、再来月 1 万円と、靴を買うために残しておいてもいいでしょう。
大事なのは「欲しいから買う」と「我慢する」の二択にしないことです。いつなら買えるのかを考える。 それもお金を上手に使う方法です。
財部教授の「30 秒チェック」
次に欲しいものを見つけたら、買う前にこの 3 つだけ確認してみてください。
- 今口座にはいくらある?
- 次の給料日までにいくら出ていく? 家賃、カード代、スマホ代、食費、交通費など
- それを全部引いたら、いくら残る?
3 つ目の答えが、今のあなたが本当に自由に使えるお金に近い金額です。 式にするととても簡単です。
自由に使えるお金 = 今あるお金 − これから払うお金 − 生活に必要なお金 − 残しておきたいお金
口座残高そのものより、こちらの数字を見る習慣をつけてみてください。
今日の研究結果
銀行に 10 万円あっても、10 万円を全部自由に使えるとは限りません。お金には「ある」と「使える」の違いがあります。
今回の 10 万円には家賃、カード代、生活費、旅行代という予定がありました。それを引いた結果、本当に自由だったのは 5,000 円。だから今回の条件で 3 万円の靴を今日買うと、その後の支払いに困ります。
でもそれは「買えない人」という意味ではありません。いつなら買えるのかが分かった人です。

