お金の基本/第 10 回(全 12 回)
長期・分散・積立を守れば、お金は減らない? 3 つの言葉が防ぐものと防げないもの
三つの言葉がそれぞれ何のための方法で、何は防げないのかを分けて見る

「投資するなら、長期・分散・積立が大切」。投資について調べると、よく出てくる言葉です。では、この三つを守っていれば、お金は減らないのでしょうか。
三つ守れば、減らない?
そういうわけではありません。長期・分散・積立には、それぞれ違う役割があります。何を防ぎやすくしてくれるのか、一つずつ見てみましょう。
分散は、一つに集中しすぎないためのもの
たとえば、パン屋一社の株だけを持っていたとします。その会社の業績が悪くなれば、持っている株も大きな影響を受けます。
そこで、パン屋だけでなく鉄道会社や食品会社にも分ける。株式だけでなく債券にも分ける。日本だけでなく海外にも分ける。これが「分散」で、こうして投資することを分散投資と呼びます。いくつかに分けておけば、一社だけの不調に、持っているもの全体が引っぱられにくくなります。
ただし、分ければ絶対に安心というわけではありません。景気が大きく悪化して、多くの株式が一緒に値下がりすることもあります。分散で避けやすくなるのは、一つの会社や一つの国に結果を左右されることです。 市場全体が下がることまで、なくせるわけではありません。
積立は、「買うタイミング」を分けるもの
では、いつ買うかはどうでしょう。一度にまとめて買えば、その日の値段で結果が大きく変わります。たまたま高い日に買ってしまうこともあります。
そこで、毎月1万円ずつのように、何回かに分けて買っていくのが「積立」です。この買い方を積立投資と呼びます。投資信託は「1口いくら」という値段で売られていて、1口100円のときに1万円出せば100口買えます。ある投資信託を毎月1万円ずつ買ったとします(税金や手数料は考えません)。
| 月 | 1口の値段 | 買った口数 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 100円 | 100口 |
| 2か月目 | 50円 | 200口 |
| 3か月目 | 100円 | 100口 |
| 合計 | 3万円 | 400口 |
合計3万円で400口なので、1口あたりの平均は75円です。最初に3万円をまとめて使っていれば、100円で300口しか買えませんでした。途中で値段が下がったため、積立ではその月に多く買えたわけです。だから積立には、高い日にまとめて買ってしまうリスクを小さくする働きがあります。
ただし、積立なら損をしないわけではありません。買い終わったあとに1口50円まで下がれば、400口×50円で2万円です。3万円出したのに、2万円になっています。反対に、値段がずっと上がり続けたなら、最初にまとめて買ったほうが有利だったこともあります。積立は、値下がりを防ぐ方法ではなく、買う時期を一日に決めない方法です。
長期は、「今すぐ売らなくていい時間」を持つこと
では、長く持つことにはどんな意味があるのでしょう。来月使う予定のお金を投資した場合、来月値下がりしていたら困ります。必要だから、売らなければならないかもしれません。
一方、10年間使う予定のないお金ならどうでしょう。途中で一度大きく下がっても、そのときに売る必要はありません。こうして長く持ち続けることを「長期投資」と呼び、途中で値下がりしても、それだけを理由に急いで売らなくて済むという意味があります。
ただし、「長く持てば、いつか必ず元に戻る」という意味ではありません。長く持っていても、最後まで値段が戻らないことはあります。長く持つことで得られるのは、戻る保証ではなく、値下がりしたときにすぐ売らなくて済むことです。
三つそろえれば安全?
ここまでを整理すると、次の違いがあります。
- 分散は、一つの商品や会社に集中しない
- 積立は、一つの買い時に集中しない
- 長期は、短い期間の値動きだけで判断しなくて済む
三つを組み合わせれば、投資の結果が一つの出来事だけで決まってしまう可能性は小さくできます。でも、なくならないものがあります。持っているものそのものが値下がりする可能性です。 分散していても、積み立てていても、長く持っていても、市場全体が大きく下がれば減ります。
だから、「長期・分散・積立なら安全」と覚えるのは少し違います。正しくは、「いくつかのリスクを小さくするための方法」と考えるほうが近いでしょう。
財部教授の30秒チェック
「長期・分散・積立」という言葉を見かけたら、三つをひとまとめにせず、それぞれ何のためなのか考えてみましょう。
- 何に集中するリスクを減らしているのか。
- それでも残るリスクは何か。
- 「損をしない」と書かれていたら、何が減らないと言っているのか。
今日の研究結果
長期・分散・積立には、それぞれ違う役割があります。分散は、投資先を一つに集中させない。積立は、買う時期を一日に集中させない。長期は、途中の値下がりだけを理由に急いで売らなくて済むようにする。
ただし、どれも「お金が減らない仕組み」ではありません。長期・分散・積立は、値下がりをなくす方法ではなく、偏った買い方や、急いで売らなければならない場面を減らすための方法です。

