財部(たからべ)教授のお金の研究室

お金の基本/第 10 回(全 12 回)

長期・分散・積立を守れば、お金は減らない? 3 つの言葉が防ぐものと防げないもの

三つの言葉がそれぞれ何のための方法で、何は防げないのかを分けて見る

2026年9月22日に公開約5分で読めます

「投資するなら、長期・分散・積立が大切」。投資について調べると、よく出てくる言葉です。では、この三つを守っていれば、お金は減らないのでしょうか。

三つ守れば、減らない?

そういうわけではありません。長期・分散・積立には、それぞれ違う役割があります。何を防ぎやすくしてくれるのか、一つずつ見てみましょう。

分散は、一つに集中しすぎないためのもの

たとえば、パン屋一社の株だけを持っていたとします。その会社の業績が悪くなれば、持っている株も大きな影響を受けます。

そこで、パン屋だけでなく鉄道会社や食品会社にも分ける。株式だけでなく債券にも分ける。日本だけでなく海外にも分ける。これが「分散」で、こうして投資することを分散投資と呼びます。いくつかに分けておけば、一社だけの不調に、持っているもの全体が引っぱられにくくなります。

ただし、分ければ絶対に安心というわけではありません。景気が大きく悪化して、多くの株式が一緒に値下がりすることもあります。分散で避けやすくなるのは、一つの会社や一つの国に結果を左右されることです。 市場全体が下がることまで、なくせるわけではありません。

積立は、「買うタイミング」を分けるもの

では、いつ買うかはどうでしょう。一度にまとめて買えば、その日の値段で結果が大きく変わります。たまたま高い日に買ってしまうこともあります。

そこで、毎月1万円ずつのように、何回かに分けて買っていくのが「積立」です。この買い方を積立投資と呼びます。投資信託は「1口いくら」という値段で売られていて、1口100円のときに1万円出せば100口買えます。ある投資信託を毎月1万円ずつ買ったとします(税金や手数料は考えません)。

月 1口の値段 買った口数
1か月目 100円 100口
2か月目 50円 200口
3か月目 100円 100口
合計 3万円 400口

合計3万円で400口なので、1口あたりの平均は75円です。最初に3万円をまとめて使っていれば、100円で300口しか買えませんでした。途中で値段が下がったため、積立ではその月に多く買えたわけです。だから積立には、高い日にまとめて買ってしまうリスクを小さくする働きがあります。

ただし、積立なら損をしないわけではありません。買い終わったあとに1口50円まで下がれば、400口×50円で2万円です。3万円出したのに、2万円になっています。反対に、値段がずっと上がり続けたなら、最初にまとめて買ったほうが有利だったこともあります。積立は、値下がりを防ぐ方法ではなく、買う時期を一日に決めない方法です。

長期は、「今すぐ売らなくていい時間」を持つこと

では、長く持つことにはどんな意味があるのでしょう。来月使う予定のお金を投資した場合、来月値下がりしていたら困ります。必要だから、売らなければならないかもしれません。

一方、10年間使う予定のないお金ならどうでしょう。途中で一度大きく下がっても、そのときに売る必要はありません。こうして長く持ち続けることを「長期投資」と呼び、途中で値下がりしても、それだけを理由に急いで売らなくて済むという意味があります。

ただし、「長く持てば、いつか必ず元に戻る」という意味ではありません。長く持っていても、最後まで値段が戻らないことはあります。長く持つことで得られるのは、戻る保証ではなく、値下がりしたときにすぐ売らなくて済むことです。

三つそろえれば安全?

ここまでを整理すると、次の違いがあります。

  • 分散は、一つの商品や会社に集中しない
  • 積立は、一つの買い時に集中しない
  • 長期は、短い期間の値動きだけで判断しなくて済む

三つを組み合わせれば、投資の結果が一つの出来事だけで決まってしまう可能性は小さくできます。でも、なくならないものがあります。持っているものそのものが値下がりする可能性です。 分散していても、積み立てていても、長く持っていても、市場全体が大きく下がれば減ります。

だから、「長期・分散・積立なら安全」と覚えるのは少し違います。正しくは、「いくつかのリスクを小さくするための方法」と考えるほうが近いでしょう。

財部教授の30秒チェック

「長期・分散・積立」という言葉を見かけたら、三つをひとまとめにせず、それぞれ何のためなのか考えてみましょう。

  1. 何に集中するリスクを減らしているのか。
  2. それでも残るリスクは何か。
  3. 「損をしない」と書かれていたら、何が減らないと言っているのか。

今日の研究結果

長期・分散・積立には、それぞれ違う役割があります。分散は、投資先を一つに集中させない。積立は、買う時期を一日に集中させない。長期は、途中の値下がりだけを理由に急いで売らなくて済むようにする。

ただし、どれも「お金が減らない仕組み」ではありません。長期・分散・積立は、値下がりをなくす方法ではなく、偏った買い方や、急いで売らなければならない場面を減らすための方法です。

教授のコメント

次に「長期・分散・積立」を勧める説明を見かけたら、そこでいう長期は何年か、何と何に分けて投資するのかが書かれているかを探してみてください。書かれていなければ、その説明からは、どれくらい減ることがあるかまでは分かりません。

次の回第 11 回 同じ 10 万円の利益なのに、約 2 万円の税金を払う人と払わない人がいる。NISA と iDeCo の違いNISAとiDeCoの税金の仕組みと、お金を引き出せる時期の違いを理解する
全 12 回の目次
  1. 第 1 回残高 10 万円。家賃と引き落としを引いたら、使えるお金は 5,000 円?
  2. 第 2 回月給 25 万円なのに、振り込まれたのは約 20 万円。5 万円はどこへ消えた?
  3. 第 3 回3 万円の靴を「月々 5,000 円」で。何回払って、手数料はいくら?
  4. 第 4 回年 15% なら、5 年で 75% 増える? 単利と複利で 10 万円を比べる
  5. 第 5 回銀行が貸した 80 万円は、誰のお金? 預金が貸し出しで生まれる仕組み
  6. 第 6 回来年の引っ越しに使う 30 万円。それまで投資に回しても大丈夫?
  7. 第 7 回1 年間、保険料を払ったのに何ももらえない。それは損だったのか?
  8. 第 8 回「年 5%」は約束ではない。もっと増える投資を選べばいいのか?
  9. 第 9 回株式は不安。投資信託なら安心? 中身に株式が入っていても?
  10. 第 10 回長期・分散・積立を守れば、お金は減らない? 3 つの言葉が防ぐものと防げないもの
  11. 第 11 回同じ 10 万円の利益なのに、約 2 万円の税金を払う人と払わない人がいる。NISA と iDeCo の違い
  12. 第 12 回「元本保証で年 20%」。登録番号も載っている。それなら安心してお金を渡せる?

出典

  • 金融庁「投資の基本」。長期投資・積立投資・分散投資のそれぞれの説明を参照。積立は「安いときに買わなかったり、高いときにだけ買ってしまうことを避けられます」、分散は「価格の変動をある程度抑えられ」とあり、いずれも損失を防ぐという記述ではないことを確認。2026-09-22 に本文確認
  • 資産運用業協会「資産運用で大切なこと」。長期・積立・分散でリスクを軽減する考え方と、同じ金額で分けて買う時間の分散(ドル・コスト平均法)を参照。本文の値段と口数は説明のための仮定で、実際の商品や値動きを示すものではありません。2026-09-22 に本文確認
  • 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「分散投資」。資産の分散・地域の分散・時間の分散という分け方を参照。2026-09-22 に本文確認
  • 日本証券業協会制作・J-FLEC掲載「長期保有をすることで、かえって損失が大きくなることはありませんか?」。投資期間を長くするほど不確定要素が増え、最終的な運用成果のぶれが大きくなる可能性は否定できない、との回答を参照。2026-09-22 に本文確認

本文の制度の数値は 2026-09-22 に確かめたものです。改定されることがあるので、申込や手続きの前に公式の記載をご確認ください。

↑