お金の基本/第 11 回(全 12 回)
同じ 10 万円の利益なのに、約 2 万円の税金を払う人と払わない人がいる。NISA と iDeCo の違い
NISAとiDeCoの税金の仕組みと、お金を引き出せる時期の違いを理解する

投資で10万円の利益が出ました。同じ商品を買って、同じだけ値上がりしたのだから、手元に残るお金も同じはずです。ところが、約2万円の税金を払う人と、まったく払わない人がいます。なぜでしょう。
同じ利益なのに、手元に残るお金が違う?
投資で10万円の利益が出たとき、約2万円の税金を払う人と、払わない人がいます。買った商品も、値上がりした金額も同じです。違うのは、どんな制度を使って投資したかで、その違いを生むのがNISAやiDeCoです。
通常、株式や投資信託を売って利益が出ると、その利益に約20%の税金がかかります。ここでいう口座は、銀行の預金口座ではなく、投資の商品を買って持っておくための口座です。例えば、50万円で買った投資信託が60万円に値上がりして売った場合を見てみましょう(売買手数料は考えません)。
| 通常の口座 | NISA口座 | |
|---|---|---|
| 買った金額 | 50万円 | 50万円 |
| 売った金額 | 60万円 | 60万円 |
| 利益 | 10万円 | 10万円 |
| 税金 | 約2万円 | 0円 |
| 手元に残る利益 | 約8万円 | 10万円 |
同じ10万円の利益でも、手元に残るのは約8万円と10万円です。通常の口座では利益から税金が引かれ、NISA口座では引かれません。
だから「NISAを買う」という言い方は、少し違います。NISAは、お金を増やしてくれる商品ではなく、投資で得た利益に税金がかからなくなる制度です。 NISA口座で買った商品が値下がりすれば、損をすることもあります。
では、iDeCoは何が違う?
NISAが投資の利益にかかる税金をなくす制度なら、iDeCoにはもう一つ、税金が軽くなる場面があります。それは、お金を積み立てるときです。
所得税や住民税は、1年間の収入から決まった額を引いた残り(これを「所得」といいます)に、税率をかけて決まります。iDeCoに積み立てたお金は、この所得からさらに引いてよいことになっています。これを「所得控除」といい、引いた分だけ税金の計算のもとが減ります。
例えば、毎月1万円をiDeCoに積み立てると、1年間で12万円です。仮に所得税と住民税を合わせた税率が20%なら、所得から12万円を引ける分、税金は12万円×20%で約2万4,000円軽くなる計算です。実際の額は所得などによって変わり、もともと所得税・住民税がかからない人には、この効果はありません。
さらに、積み立てたお金が持っている間に増えた分にも、税金はかかりません。積み立てるときも、持っている間も税金が軽くなるので、iDeCoのほうが税金の軽くなる場面が多いように見えます。 ところが、iDeCoには大きな条件が二つあります。
税金が軽くなるなら、全部iDeCoでいい?
一つ目の条件は、お金を引き出せる時期です。例えば、5年後に車を買うためのお金を積み立てているとしましょう。NISAなら、必要になったときに商品を売って現金に換えられます。売るときに値下がりしている可能性はありますが、年齢による制限はありません。
一方、iDeCoは60歳を過ぎてからの生活のお金を準備するための制度です。そのため、原則として60歳になるまで引き出せません。加入していた期間が短いと、受け取りを始められる年齢はさらに遅くなります。
障害や死亡のような例外はありますが、急にお金が必要になったという理由だけでは、自由に引き出せません。iDeCoで積み立てるお金は、原則として60歳まで使わないことが前提なのです。
iDeCoは、受け取るときも税金がかからないの?
二つ目の条件は、受け取るときの税金です。NISAでは、利益は商品を売っても非課税、つまり税金がかかりません。一方、iDeCoでは、積み立てたお金を受け取るときに税金がかかる場合があります。
受け取り方は、まとめて受け取るか、少しずつ受け取るかの二つです。どちらにも、税金の計算から一定の額を引ける仕組みがあります。ただ、まとめて受け取る場合は、会社の退職金を受け取る順番や間隔によって、引ける額が減ることがあります。少しずつ受け取る場合も、受け取る額や他の年金によって税金の額が変わります。
iDeCoは、積み立てるときに軽くなる税金だけでなく、最後にいくら手元に残るかまで考える必要があります。 実際の税額を知るには、退職金や年金も含めた確認が要ります。
NISAとiDeCoの違いを並べてみると
ここまでの違いを、税金が軽くなる場面ごとに並べます。
| NISA | iDeCo | |
|---|---|---|
| 何のための制度か | 投資の利益に税金をかけない | 60歳以降のお金を準備する |
| 積み立てるとき | 税金は軽くならない | 所得から引けるので軽くなる |
| 持っている間 | 増えた分に税金はかからない | 増えた分に税金はかからない |
| 引き出せる時期 | 商品を売ればいつでも | 原則60歳以降 |
| 受け取るとき | 税金はかからない | 税金がかかることがある |
| 気をつけること | 値下がりで損をする | 引き出せない時期と、受け取るときの税金 |
どちらも、税金が軽くなる場面が違うだけで、利益を約束する制度ではありません。iDeCoには加入するときや持っている間に手数料もかかります。税金が軽くなることは、投資の利益や出したお金を守ってくれるものではないのです。
財部教授の30秒チェック
NISAもiDeCoも、利益を約束する商品ではなく、税金の扱いを変える制度です。その話を聞いたら、次の三つを確認してみましょう。
- 税金が軽くなるのは、積み立てるとき、持っている間、受け取るときのどこか。
- 積み立てたお金は、いつから引き出せるのか。
- 最後に残るお金を見るとき、受け取るときの税金や手数料も確かめたか。
今日の研究結果
同じ10万円の利益でも、通常の口座とNISA口座では、手元に残る金額が違います。iDeCoなら積み立てるときにも税金が軽くなりますが、引き出せる時期に制限があり、受け取るときに税金がかかる場合もあります。
NISAもiDeCoも、利益を約束する商品ではなく、税金の扱いを変える制度です。税金がいくら軽くなるかだけでなく、いつ使えて、最後にいくら残るのか。 この三つを分けて考えれば、制度の違いが見えてきます。

