財部(たからべ)教授のお金の研究室

お金の基本/第 11 回(全 12 回)

同じ 10 万円の利益なのに、約 2 万円の税金を払う人と払わない人がいる。NISA と iDeCo の違い

NISAとiDeCoの税金の仕組みと、お金を引き出せる時期の違いを理解する

2026年9月23日に公開約6分で読めます

投資で10万円の利益が出ました。同じ商品を買って、同じだけ値上がりしたのだから、手元に残るお金も同じはずです。ところが、約2万円の税金を払う人と、まったく払わない人がいます。なぜでしょう。

同じ利益なのに、手元に残るお金が違う?

投資で10万円の利益が出たとき、約2万円の税金を払う人と、払わない人がいます。買った商品も、値上がりした金額も同じです。違うのは、どんな制度を使って投資したかで、その違いを生むのがNISAやiDeCoです。

通常、株式や投資信託を売って利益が出ると、その利益に約20%の税金がかかります。ここでいう口座は、銀行の預金口座ではなく、投資の商品を買って持っておくための口座です。例えば、50万円で買った投資信託が60万円に値上がりして売った場合を見てみましょう(売買手数料は考えません)。

通常の口座 NISA口座
買った金額 50万円 50万円
売った金額 60万円 60万円
利益 10万円 10万円
税金 約2万円 0円
手元に残る利益 約8万円 10万円

同じ10万円の利益でも、手元に残るのは約8万円と10万円です。通常の口座では利益から税金が引かれ、NISA口座では引かれません。

だから「NISAを買う」という言い方は、少し違います。NISAは、お金を増やしてくれる商品ではなく、投資で得た利益に税金がかからなくなる制度です。 NISA口座で買った商品が値下がりすれば、損をすることもあります。

では、iDeCoは何が違う?

NISAが投資の利益にかかる税金をなくす制度なら、iDeCoにはもう一つ、税金が軽くなる場面があります。それは、お金を積み立てるときです。

所得税や住民税は、1年間の収入から決まった額を引いた残り(これを「所得」といいます)に、税率をかけて決まります。iDeCoに積み立てたお金は、この所得からさらに引いてよいことになっています。これを「所得控除」といい、引いた分だけ税金の計算のもとが減ります。

例えば、毎月1万円をiDeCoに積み立てると、1年間で12万円です。仮に所得税と住民税を合わせた税率が20%なら、所得から12万円を引ける分、税金は12万円×20%で約2万4,000円軽くなる計算です。実際の額は所得などによって変わり、もともと所得税・住民税がかからない人には、この効果はありません。

さらに、積み立てたお金が持っている間に増えた分にも、税金はかかりません。積み立てるときも、持っている間も税金が軽くなるので、iDeCoのほうが税金の軽くなる場面が多いように見えます。 ところが、iDeCoには大きな条件が二つあります。

税金が軽くなるなら、全部iDeCoでいい?

一つ目の条件は、お金を引き出せる時期です。例えば、5年後に車を買うためのお金を積み立てているとしましょう。NISAなら、必要になったときに商品を売って現金に換えられます。売るときに値下がりしている可能性はありますが、年齢による制限はありません。

一方、iDeCoは60歳を過ぎてからの生活のお金を準備するための制度です。そのため、原則として60歳になるまで引き出せません。加入していた期間が短いと、受け取りを始められる年齢はさらに遅くなります。

障害や死亡のような例外はありますが、急にお金が必要になったという理由だけでは、自由に引き出せません。iDeCoで積み立てるお金は、原則として60歳まで使わないことが前提なのです。

iDeCoは、受け取るときも税金がかからないの?

二つ目の条件は、受け取るときの税金です。NISAでは、利益は商品を売っても非課税、つまり税金がかかりません。一方、iDeCoでは、積み立てたお金を受け取るときに税金がかかる場合があります。

受け取り方は、まとめて受け取るか、少しずつ受け取るかの二つです。どちらにも、税金の計算から一定の額を引ける仕組みがあります。ただ、まとめて受け取る場合は、会社の退職金を受け取る順番や間隔によって、引ける額が減ることがあります。少しずつ受け取る場合も、受け取る額や他の年金によって税金の額が変わります。

iDeCoは、積み立てるときに軽くなる税金だけでなく、最後にいくら手元に残るかまで考える必要があります。 実際の税額を知るには、退職金や年金も含めた確認が要ります。

NISAとiDeCoの違いを並べてみると

ここまでの違いを、税金が軽くなる場面ごとに並べます。

NISA iDeCo
何のための制度か 投資の利益に税金をかけない 60歳以降のお金を準備する
積み立てるとき 税金は軽くならない 所得から引けるので軽くなる
持っている間 増えた分に税金はかからない 増えた分に税金はかからない
引き出せる時期 商品を売ればいつでも 原則60歳以降
受け取るとき 税金はかからない 税金がかかることがある
気をつけること 値下がりで損をする 引き出せない時期と、受け取るときの税金

どちらも、税金が軽くなる場面が違うだけで、利益を約束する制度ではありません。iDeCoには加入するときや持っている間に手数料もかかります。税金が軽くなることは、投資の利益や出したお金を守ってくれるものではないのです。

財部教授の30秒チェック

NISAもiDeCoも、利益を約束する商品ではなく、税金の扱いを変える制度です。その話を聞いたら、次の三つを確認してみましょう。

  1. 税金が軽くなるのは、積み立てるとき、持っている間、受け取るときのどこか。
  2. 積み立てたお金は、いつから引き出せるのか。
  3. 最後に残るお金を見るとき、受け取るときの税金や手数料も確かめたか。

今日の研究結果

同じ10万円の利益でも、通常の口座とNISA口座では、手元に残る金額が違います。iDeCoなら積み立てるときにも税金が軽くなりますが、引き出せる時期に制限があり、受け取るときに税金がかかる場合もあります。

NISAもiDeCoも、利益を約束する商品ではなく、税金の扱いを変える制度です。税金がいくら軽くなるかだけでなく、いつ使えて、最後にいくら残るのか。 この三つを分けて考えれば、制度の違いが見えてきます。

教授のコメント

今度NISAやiDeCoの話を聞いたら、税金だけでなく、いつ引き出せるのかを、金融庁のNISAのページやiDeCoの公式サイトで確かめてみてください。そのお金を自分がいつ使う予定かと並べると、合うかどうかが見えてきます。

次の回第 12 回 「元本保証で年 20%」。登録番号も載っている。それなら安心してお金を渡せる?投資の勧誘で確かめることと、送金前に相談できる窓口を知る
全 12 回の目次
  1. 第 1 回残高 10 万円。家賃と引き落としを引いたら、使えるお金は 5,000 円?
  2. 第 2 回月給 25 万円なのに、振り込まれたのは約 20 万円。5 万円はどこへ消えた?
  3. 第 3 回3 万円の靴を「月々 5,000 円」で。何回払って、手数料はいくら?
  4. 第 4 回年 15% なら、5 年で 75% 増える? 単利と複利で 10 万円を比べる
  5. 第 5 回銀行が貸した 80 万円は、誰のお金? 預金が貸し出しで生まれる仕組み
  6. 第 6 回来年の引っ越しに使う 30 万円。それまで投資に回しても大丈夫?
  7. 第 7 回1 年間、保険料を払ったのに何ももらえない。それは損だったのか?
  8. 第 8 回「年 5%」は約束ではない。もっと増える投資を選べばいいのか?
  9. 第 9 回株式は不安。投資信託なら安心? 中身に株式が入っていても?
  10. 第 10 回長期・分散・積立を守れば、お金は減らない? 3 つの言葉が防ぐものと防げないもの
  11. 第 11 回同じ 10 万円の利益なのに、約 2 万円の税金を払う人と払わない人がいる。NISA と iDeCo の違い
  12. 第 12 回「元本保証で年 20%」。登録番号も載っている。それなら安心してお金を渡せる?

出典

  • 金融庁「NISAを知る」。通常は売却益や配当に約20%の税金がかかること、NISA口座の利益が非課税になることを参照。本文の金額は説明のための仮定で、実際の商品や値動きを示すものではありません。2026-09-22 に本文確認
  • iDeCo公式サイト「iDeCoの特徴」。掛金・運用益・給付の税制優遇、原則60歳まで受給できないこと、運用資産にかかる特別法人税は現在課税が停止されていること、課税所得がない人は掛金の所得控除を受けられないこと、手数料がかかることを参照。毎月1万円・税率20%の節税額は本文の仮定で計算した例です。2026-09-22 に本文確認
  • iDeCo公式サイト「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等」。60歳から受け取るには通算加入者等期間10年以上が必要で、期間に応じて受給開始が61〜65歳に繰り下がること(60歳以上で初めて加入した場合は加入から5年で受給できる)、障害給付金・死亡一時金、一時金と年金の受取方法を参照。本文では「加入していた期間が短いと受け取りが遅くなる」にとどめています。2026-09-22 に本文確認
  • 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」。退職所得控除の計算と、確定拠出年金の老齢給付金として支給される一時金が退職所得とみなされることを参照。2026-09-22 に本文確認
  • 国税庁「No.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき」。前年以前19年内に退職手当等を受けて確定拠出年金の老齢一時金を受ける場合と、前年以前9年内に老齢一時金を受けて退職手当等を受ける場合(2026年1月1日以後の支払)に、重複する期間を退職所得控除の計算から除く仕組みを参照。本文では「受け取る順番や間隔によって引ける額が減ることがある」にとどめています。本文の税率20%は所得税10%と住民税10%を合わせた仮定です。2026-09-22 に本文確認

本文の制度の数値は 2026-09-23 に確かめたものです。改定されることがあるので、申込や手続きの前に公式の記載をご確認ください。

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