お金の基本/第 6 回(全 12 回)
来年の引っ越しに使う 30 万円。それまで投資に回しても大丈夫?
使う時期と急な出費への備えから、預金で残すお金と投資に回せるお金を分ける

貯金ができると、少し増やせないかと考えることがあります。その前に確かめたいのは、いつ使うお金なのか。来年の引っ越し代を例に、手元に残しておきたいお金を分けてみましょう。
来年の引っ越しに向けて、30万円を貯めました。引っ越すのは1年後。それまでは銀行に預けておく予定です。「使わない間に投資して、少し増やせたら」と思うかもしれません。
でも、その30万円を投資に回すと、引っ越し代が足りなくなるかもしれません。今は使わなくても、来年には必要だからです。 引っ越しの日に値下がりしていたら、どうなるでしょう。
30万円が24万円になっていたら?
値動きのある商品に30万円を投資し、引っ越しの直前に24万円になったとします。2割の値下がりです。これは将来の値動きの予想ではなく、必要な日に減っていたら何が起こるかを考える例です。
| 引っ越しまでのお金 | 金額 |
|---|---|
| 用意していたお金 | 30万円 |
| 値下がり後に売って受け取るお金 | 24万円 |
| 引っ越しに必要な金額 | 30万円 |
| 足りない金額 | 6万円 |
引っ越しを予定どおり行うなら、別に6万円を用意しなければなりません。「値段が戻るまで待ちたい」と思っても、支払日が先に来てしまいます。
使う日が決まっているお金には、その日に必要な額を使えることが大切です。 増える可能性だけでなく、減ったときに予定を変えられるかまで考える必要があります。
来年使うお金は、普通預金と定期預金のどちらにする?
来月の家賃や食費も、来年の引っ越し代と同じです。支払うときに足りなくなると困るので、必要な額を残しておきます。日々の支払いには、出し入れしやすい普通預金が候補になります。
1年後の引っ越し代なら、普通預金のほかに、使う頃に預ける期間が終わる定期預金も候補です。定期預金では、「半年」「1年」など、預ける期間を先に決めます。引っ越し代を1年間預けるなら、その期間が終わる日が支払いに間に合うかを確かめます。この期間が終わる日を「満期」といいます。
引っ越しが早まることもあるので、途中で引き出せるか、その場合の条件も確認します。使う日を動かせないお金なら、増えるかどうかより先に、その日に必要な額があるかが問われます。
「使う予定がない」なら、全部投資していい?
1年後の引っ越し代は、使う日が決まっています。一方で、冷蔵庫が壊れたときのお金は、使う日は決まっていません。でも、壊れたらすぐに必要になります。
買い替え代まで投資していたら、値下がりした日に売らなければならないかもしれません。引っ越し代も冷蔵庫の買い替え代も、必要になったときに減っていたら困る点は同じです。
仕事が減って収入が落ちたときも、家賃や食費の支払いは続きます。こうした出費に備えるお金は、普通預金など、必要なときに取り出せる形で残しておきます。使う日が分からなくても、急に必要になるお金は、投資に回すお金と分けます。
では、どのお金なら投資を考えられる?
引っ越し代も、冷蔵庫の買い替えや収入の減少への備えも、別に残せたとします。そのうえで、しばらく使う予定のないお金が残っていたら、そのお金で投資を考えられます。
確かめたいのは、値下がりしたときに、生活費や引っ越し代を払うために売らずに済むかです。支払いのためにすぐ売る必要がなく、使う時期を待てることが、投資を考える条件になります。 ただし、待てば必ず元の金額に戻るという意味ではありません。
お金の教育を行う公的な機関、J-FLEC(ジェイフレック)の教材でも、生活や近い将来に使うお金と、急な出費への備えを残し、使う予定のないお金で投資を行う考え方が示されています。
急な出費への備えは、いくらあればいい?
まず、家賃や食費、光熱費など、暮らしを続けるために毎月いくら必要かを見ます。給料の額ではなく、出ていくお金から考えます。
仮に、必要な生活費が月20万円なら、収入がない状態を3か月支えるには60万円、6か月なら120万円です。消費者庁の教材では、緊急資金の目安として生活費の3か月分から1年分という幅を示しています。全員に同じ額が当てはまるわけではありません。
自分の場合は、収入が減ったら何か月ほど貯金で補う必要がありそうでしょうか。家族に別の収入があるか、次の仕事が見つかるまでに時間がかかりそうかによっても変わります。国などから生活を支えるお金を受け取れる場合も、金額だけでなく、いつ受け取れるかを確認します。
生活費の備えに加え、近いうちに壊れそうな家電なども書き出してみます。来年の引っ越し代30万円を、急な出費への備えにも数えてしまうと、両方が重なったときに足りません。同じお金に、二つの支払いを任せないことが大切です。
そんなに貯まるまで、何もできないの?
目標額に届かなくても、備えを作ることは始められます。まずは次の給料日までの支払いを確保し、そのうえで毎月取り分けられる額を考えます。生活費1か月分を最初の区切りにする方法もあります。
引っ越しのように期限のある予定は、「あといくら必要か」を「残り何か月か」で割ると、毎月貯めたい額が見えます。たとえば、まだ18万円しか貯まっていなければ、目標の30万円まであと12万円。残り1年なら、毎月1万円ずつ貯める計算です。預金の利息や投資で増える分は、ここでは数えません。
その額と急な出費への備えを合わせると家計が苦しくなるなら、引っ越しの予算や時期を見直す余地があるか考えます。足りない分を投資の利益で埋める計画では、必要な日に間に合うかを確かめられません。
財部教授の30秒チェック
口座の残高を見るとき、次の三つをメモしてみてください。
- 使う予定と時期、必要な額を書く。
- 急な出費や収入の減少に備えて残す額を決める。
- それらを取り分けた後に、しばらく使わず、値下がりしても待てるお金があるかを見る。
口座をいくつも作らなくても、メモで分けるところから始められます。予定や働き方が変わったら、取り分ける額も見直します。
今日の研究結果
来年の引っ越し代30万円は、今使っていなくても、支払う日に減っていたら困るお金です。冷蔵庫の買い替え代は、使う日が分からなくても、急に必要になるので残しておきます。その二つを分けた後に、しばらく使わず、値下がりしてもすぐ売らずに済むお金で投資を考えます。
残高を見るときは、「今使っていないか」だけでなく、「必要になったとき、待てるか」まで確かめてみましょう。

