日本のお金の歴史/第 6 回
日本銀行のお札は、いつまで金と交換できて、いつからできなくなった?
銀と交換できるお札から、交換の約束のないお札になるまでをたどる

一万円札を日本銀行に持っていっても、金とは交換してもらえません。でも、お札はかつて金と交換できたと聞きます。いつまで交換できて、いつからできなくなったのでしょう。そして今、お札が増えすぎないための歯止めは、何なのでしょう。
第5回の終わりに、問いを一つ残しました。今のお札に、金貨や銀貨と交換する約束はありません。では、増やしすぎないための歯止めは何なのか、という問いです。
その答えに行く前に、お札と金の関係をたどります。「お札はかつて金と交換できた」と聞いたことがある人もいるでしょう。それは、どのお札の話なのでしょうか。
最初のお札は、銀と交換できた
第5回で見たとおり、日本銀行が最初のお札を出したのは1885年です。このお札は、日本銀行に持っていけば、書かれた額の銀貨と交換してもらえる「日本銀行兌換銀券(だかんぎんけん)」でした。金ではなく銀だったのは、当時の日本が蓄えていたお金が銀だったからです。
1897年、貨幣法という法律で、1円を金0.75gと決めました。お札と交換する相手が、銀から金に変わったのです。欧米の国々は、すでに金を基準にお金の値打ちを決めていて、日本もそれにならいました。1899年からは、名前から「銀」を外した「日本銀行兌換券」が出ます。
交換は、いつ止まった?
ここまでの流れも含めて、年の順に並べます。制度が変わった年と、お札の名前が変わった年は別なので、行を分けます。
| 年 | 何が起きたか | 交換できる相手 | お札の名前 |
|---|---|---|---|
| 1885年 | 日本銀行が最初のお札を発行 | 銀貨 | 日本銀行兌換銀券 |
| 1897年 | 貨幣法で、1円を金0.75gと決める | 金貨 | 日本銀行兌換銀券のまま |
| 1899年 | 名前から「銀」を外したお札を発行 | 金貨 | 日本銀行兌換券 |
| 1931年 | 金貨との交換を停止 | なし | 日本銀行兌換券のまま |
| 1942年 | 日本銀行法で、交換を約束しない制度へ | なし | 日本銀行券 |
日本銀行のお札と金との交換は1931年に止まり、1942年に、交換を約束しない制度へ移りました。 1931年には、世界的な不況のなかでイギリスが金との交換をやめ、日本も同じ年の12月に交換を止めました。
1942年の日本銀行法で、お札から金と引き換えると書いた文言が消え、名前は「日本銀行券」になりました。交換の約束をやめ、お札の量を日本銀行が調節する仕組みを、管理通貨制度といいます。
一万円という額のお札が初めて出たのは、1958年です。その後、絵柄は何回か変わりましたが、どの一万円札も、金と交換できない時代のお札です。「一万円札がかつて金と交換できた」ことは、一度もありません。
交換できないなら、いくらでも刷れてしまうのでは?
第5回の村の例で見たように、品物が増えないのに紙幣だけが増えれば、同じ紙幣で買える量は減りやすくなります。金と交換する約束は、その歯止めの一つでした。第5回の金貨100枚の例のように、金庫に金貨が100枚しかないのに、金貨1枚と交換できるお札を300枚出せば、200人には渡す金貨がありません。だから交換の約束があるあいだは、金庫の金に見合う分までしかお札を出しにくかったのです。約束をやめた今、何が歯止めなのでしょう。
金の量という枠は、もうありません。代わりに置かれているのは、日本銀行の仕事です。今の日本銀行法(1997年に全面的に改正されたもの)は、日本銀行の目的を、物価の安定を図ることと定めています。日本銀行は、金利などを通じて世の中のお金の出回り方に働きかけ、物の値段が全体として大きく動かないようにしようとします。
日本銀行自身も、今の日本を含む多くの国では、お金への信頼は、中央銀行が持つ金などで直接支えられるのではなく、物価の安定を図ることで保たれる、と説明しています。
ただし、法律が日本銀行に求めているのは、物価が大きく動かないように手を打つことです。物価が動かないと約束しているわけではありません。手を打っても、物価が大きく上がることはあります。
「一万円札の値打ち」を聞かれたら、どう答える?
第3回で、お店が100円玉を受け取るのはなぜか、と聞きました。国が作ったからか、みんなが受け取るからか。あなたはどう考えたでしょうか。法律の側から見ると、答えの一つはこうです。
金と交換できないのに、お店は一万円札や100円玉を受け取ります。理由の一つは法律です。法律は、日本銀行のお札を、何枚でも支払いに使えるお金(法貨)と定めています。硬貨は、同じ種類で一度に20枚までです。21枚目からは、お店が受け取らなくてもよいのです。
ただし、これは「お店は必ず受け取らなければならない」という意味ではありません。前もって別の払い方を決めてあれば、その決め事が優先します。家賃を「振込で払う」と契約に書くのは、その一つです。法律が保証しているのは、こうした決め事が無いときに、お札が支払いの手段になることです。
では、一万円札の値打ちは何かと聞かれたら、どう答えるでしょうか。次の2つに分けると、答えやすくなります。
- 1万円として支払いに使える理由は、何によるか。
- 1万円で買える量は、何によって変わるか。
どちらも、この回と第5回の中に答えがあります。
今日の研究結果
日本銀行のお札は、1885年に銀貨と交換できる形で始まり、1897年からは交換の相手が金になりました。金との交換は1931年に止まり、1942年の日本銀行法で、交換を約束しない制度へ移りました。一万円札は、1958年に初めて出たときから、金と交換できないお札です。今は交換の約束ではなく、日本銀行が物価の安定を図ることが法律で定められています。お札が1万円として払えるのは法律の定めによりますが、その1万円で何が買えるかは、物価によって変わります。

