財部(たからべ)教授のお金の研究室

社会人一年目のお金/第 6 回

初めてのボーナス 212,748 円。同期は「全部突っ込んだ」。1 か月後に使うお金も投資に回していい?

ボーナスの手取りを使う時期で分け、使う日に値下がりしていたら困るお金と、値動きを待てるお金を見分ける

2026年10月10日に公開約7分で読めます

12 月、陽太さんに初めてのボーナスが振り込まれます。同期は「全部投資に突っ込んだ」と言います。ボーナスから引かれる保険料と税金は 2026 年度の料率と算出率の表で計算し、値動きの考え方は金融庁の金融ガイドに合わせています。

12 月 10 日の木曜日、陽太の口座に「賞与」の名前で 212,748 円が振り込まれた。入社して初めてのボーナスだ。明細の額面は 260,000 円、月給 1 か月分だった。

残高は 743,086 円。4 月に 4 万円で始まった口座が、70 万円を超えていた。陽太は画面を少しのあいだ眺めてから、スクリーンショットを撮った。誰に見せるわけでもない。

翌日の金曜日、仕事のあとで同期と飲んだ。同期は、ボーナスの話になるとすぐ言った。

「俺、全部投資に突っ込んだ。置いておいても増えないし。1 年で 2 割上がるものもあるんだよ」

同期はスマホの画面を見せた。証券会社のアプリに、昨日入れたばかりの金額が並んでいる。1 日で、もう数百円増えていた。

陽太は、9 月の浅井の話を思い出した。あのときの「年 20%」とは違う、と同期は言う。元本保証なんて言っていない、ちゃんとした証券会社の口座で、誰でも買えるものだ、と。

「陽太もやればいいじゃん。使う予定、あるの」

ある、と陽太は思った。年末は実家に帰る。12 月 29 日の新幹線の往復と、両親への土産。初めてのボーナスだから、少しいいものを買いたい。合わせて 50,000 円は見ておきたい。それから、パソコンのリボ払い。残りは 1 月に全部まとめて払ってしまうつもりだった。12 月 27 日の引き落としのあとで、支払残高は 125,000 円になる。

50,000 円と 125,000 円。足して 175,000 円。残るのは 37,748 円だ。

「1 月に払うなら、1 月に売ればいいだろ。1 か月で減ることなんて、そんなにない」

そんなにない。同期はそう言ったが、ないとは言わなかった。

帰りの電車で、陽太はメモを開いた。212,748 円のうち、年末に使うのが 50,000 円。1 月に使うのが 125,000 円。使う時期を決めていないのが、37,748 円。

37,748 円。これなら、同期の言うとおりに回してもいい気がした。でも同期は、175,000 円のほうも回せばいいと言っている。

同期は全部突っ込んだ。陽太が同じようにするなら、1 月に売ればいい。1 か月で、2 割上がるものがある。それなら、2 割下がることも、あるんだろうか。下がっていたら、1 月のリボの支払いはどうなるんだろう。

12 月 29 日の新幹線の切符を、陽太は明日買うつもりだった。切符代は、ボーナスから出す。

ボーナスの 212,748 円を、使う時期で分ける

同期の言葉をどう受け取るかは陽太さんに任せて、私はボーナスの 212,748 円を、使う時期で 3 つに分けてみます。

その前に、額面 260,000 円が 212,748 円になった中身を確かめます。ボーナスからも、月給と同じ種類の保険料と税金が引かれます。

金額
額面 260,000 円
健康保険・子ども・子育て支援金・厚生年金 −36,894 円
雇用保険 −1,300 円
所得税(前の月の給料で決まる率 4.084%) −9,058 円
振り込まれた額 212,748 円

第 1 話と同じ仕組みで、健康保険と厚生年金は額面に料率を掛け、所得税はボーナス専用の表で率を決めます。住民税は、前の年の所得で決めた 1 年分を 12 で割って毎月の給料から引くので、ボーナスからは引かれません。1 年目の陽太さんは、給料からもまだ引かれていません。

全部回して、2 割減っていたら

同期の「1 年で 2 割上がるものもある」は、本当にあります。ただ、2 割上がることがあるものは、2 割下がることもあります。値段が動く幅は、上にも下にも開いています。この幅を、投資では「リスク」と呼びます。

陽太さんが同期と同じように 212,748 円を全部回し、使う日までに 2 割減っていたとします。メモの順に払っていくと、何が起きるかを並べます。

使う日 払う額 その日に手元にある額 払ったあと
12 月 10 日(回した日) — 212,748 円 2 割減ると 170,198 円
12 月 29 日(帰省) 50,000 円 170,198 円 払える。残り 120,198 円
1 月(リボ払いの残りをまとめて払う) 125,000 円 120,198 円 4,802 円足りない。残る分には手数料がかかり続ける
決めていない 37,748 円 0 円 消えたのはこのお金

減った 42,550 円は、どこから消えたのか。まず、使う日を決めていなかった 37,748 円が丸ごと消えました。それでも足りない 4,802 円が、1 月のリボ払いの支払いに食い込みました。帰省の 50,000 円が無事だったのは、使う日が早く、先に払ったからです。

帰省の 50,000 円も 1 月の 125,000 円も、使う日まで 1 か月足らずです。下がった日に、下がった値段で売るしかないお金で、増える可能性より、使う日に足りている確かさのほうが要ります。

37,748 円は違います。使う日が決まっていないので、下がった日に売る必要がありません。回すのがこの 37,748 円だけなら、2 割減って 7,550 円が消えても、帰省にもリボ払いにもぶつかりません。

同期は「全部突っ込んだ」と言いました。同期に 1 年以内に使うお金があるかどうかは、陽太さんには分かりません。同期と陽太さんで違うのは、投資の知識ではなく、1 月に使うお金があるかどうかでした。

「そんなにない」の中身

1 か月で 2 割下がることは、同期の言うとおり、いつも起きるわけではありません。ただ、金融庁の金融ガイドも、金融市場は短期的には大きく変動することがあると書いています。起きる頻度が低いことと、起きたときに困らないことは別です。

リボ払いの残りが払いきれず手数料が続くほど困るなら、頻度が低くても、そのお金は投資に回せません。37,748 円が 3 割減っても暮らしが変わらないなら、そのお金は投資に回してもいいでしょう。分かれ目は、下がる確率ではなく、下がった日に使うお金かどうかです。

同じ考え方は、お金の基本ゼミの第 8 回でも確かめています。

陽太さんの問いに戻る

1 か月後に使うお金も投資に回していいのか。回すことはできます。ただし、全部回して使う日に 2 割減っていたら、1 月に予定していた支払いが 4,802 円足りなくなります。足りなくなって困るかどうかが、回すかどうかを決めます。

今回分かったことを、3 つにまとめます。

  • ボーナスからも保険料と所得税が引かれる。額面 260,000 円の手取りは 212,748 円
  • 2 割上がることがあるものは、2 割下がることもある。全部回して減ると、使う日の無いお金が先に消え、足りない分は使う日の決まった支払いに食い込む
  • 「全部突っ込んだ」が当てはまるのは、使う時期を決めていないお金まで。陽太さんのボーナスでは 37,748 円がそれにあたる

教授のコメント

12 月 11 日の陽太さんの立場で、ボーナスの 212,748 円を 3 つに分けるとしたら、どの線で分けますか。その分け方で、同期の「全部突っ込んだ」のうち自分にも当てはまる部分はどこまでですか。

出典

  • 日本年金機構「賞与にかかる保険料はどのように計算するのですか。」。賞与の額から 1,000 円未満を切り捨てた標準賞与額に健康保険・厚生年金保険の保険料率を掛け、事業主と被保険者が折半で負担することを参照。https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kounen/hokenryo/shoyokeisan.html 。2026-10-09 に確認
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和 8 年 3 月分(4 月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)」。健康保険料率・子ども・子育て支援金率・厚生年金保険料率を参照。https://www.kyoukaikenpo.or.jp/assets/R8_13tokyo.pdf 。2026-10-08 に確認
  • 国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和 8 年分)」。扶養親族等 0 人で、前月の社会保険料等控除後の給与等の金額が 94 千円以上 260 千円未満のときの率が 4.084% であることを参照。https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2026/data/15-16.pdf 。2026-10-09 に確認
  • 東京都主税局「個人住民税と特別徴収について」。個人住民税は前年の所得に対して計算し、6 月から翌年 5 月までの毎月の給料から月割の額を徴収することを参照。https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/life/kojin_ju/tokubetsu/about 。2026-10-09 に確認
  • 金融庁「基礎から学べる金融ガイド」冊子 12・14・15 ページ「株式/債券/投資信託」。リターンの不確実性(振れ幅)をリスクと呼ぶこと、金融市場は短期的には大きく変動することがあること、投資する資金は生活資金とは別の余裕資金で行うことを参照。https://www.fsa.go.jp/teach/kou4.pdf 。2026-10-09 に確認

ボーナスの額は架空の例で、1 年目の冬のボーナスが月給 1 か月分とは限りません。「2 割」は同期の言葉を上下に同じ幅で置いた仮の数字で、実在の商品の値動きではありません。

本文の制度の数値は 2026-10-10 に確かめたものです。改定されることがあるので、申込や手続きの前に公式の記載をご確認ください。

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