財部(たからべ)教授のお金の研究室

社会人一年目のお金/第 2 回

給料日の口座に 36 万円。家賃とカードの引き落としを引いたら、使っていいのはいくら?

残高から次の給料日までに出ていくお金を引き、自由に使えるお金とカードの後払いの関係を知る

2026年10月8日に公開約6分で読めます

6 月の給料日、陽太さんの口座には 36 万円あります。欲しかったパソコンにも手が届きそうです。口座の出入りは、前の話から続けて計算しています。

6 月 25 日の夜、陽太は布団の上で銀行のアプリを開いた。給料が入って、残高は 361,782 円になっていた。

5 月の給料日に分かったことは、まだ覚えている。毎月入るのは、21 万円台だ。それでも、口座には 36 万円ある。

「パソコンを買っても、20 万円残る」

スマホのメモには、4 月に書いた「ノートパソコン 15 万円」の行が残っている。今週末に買いに行こう、と陽太は決めた。

そのとき、カード会社のアプリから通知が届いた。

「6 月 27 日のお引き落とし金額が確定しました 88,400 円」

8 万円? 陽太はアプリを開いて、利用明細を上から見ていった。5 月に買った自転車が 39,800 円。本棚が 12,600 円。同期と出かけた週末の旅行の、宿と電車が 36,000 円。どれも、買ったときのことは覚えている。ただ、カードで払ったあと、口座の残高は 1 円も減らなかった。だから、もう払い終わった気になっていた。

先月も同じことがあった、と陽太は思い出した。5 月 27 日に、口座から 98,600 円が引き落とされていた。4 月に家電量販店で買った電子レンジや掃除機、スーツの代金だった。あのときは給料日の 2 日後で、給料が入ったばかりの口座には 37 万円以上あった。だから、気にも留めなかった。

陽太はメモの「ノートパソコン」の下に、これから口座から出ていくお金を書き出してみた。

  • カードの引き落とし(6 月 27 日): 88,400 円
  • 7 月分の家賃(6 月 30 日): 75,000 円

ほかにもある気がした。電気とガスと水道、スマホの代金は、毎月初めに引き落とされている。食べるものも、買わないといけない。

アプリの画面の下のほうに、広告が出ていた。「最新ノートパソコン、月々 5,000 円から」

陽太は広告から目をそらして、もう一度残高を見た。361,782 円。この数字のうち、自分が使っていいのは、いくらなんだろう。

36 万円の行き先を書き出す

陽太さんは残高を見つめたままです。ここから先は私が、陽太さんのメモの続きを書いてみます。次の給料日の 7 月 25 日までに、口座から出ていくことが決まっているお金を並べます。食費と日用品は、これまでの 1 か月の目安で置きました。

金額
6 月 25 日の残高 361,782 円
カードの引き落とし(6 月 27 日、5 月に使った分) −88,400 円
7 月分の家賃(6 月 30 日) −75,000 円
電気・ガス・水道・スマホ(7 月初め) −15,200 円
食費・日用品(7 月 24 日まで) −45,000 円
次の給料日まで自由に使えるお金 138,182 円

口座にある 36 万円のうち、自由に使えるのは 14 万円足らずでした。 15 万円のパソコンの値段には届きません。

口座の残高は、今そこにあるお金です。自由に使えるお金は、その中から、もう行き先が決まっているお金を引いた残りです。陽太さんが見ていたのは残高で、知りたかったのは自由に使えるお金でした。

カードで払ったのに、なぜ残高が減らなかった?

カードで買い物をすると、お店への代金は、カード会社がいったん立て替えます。陽太さんがカード会社に払うのは、その後です。陽太さんのカードは、月末までに使った分を、翌月 27 日に口座からまとめて引き落とすカードでした。5 月に使った 88,400 円は、6 月 27 日まで口座に残ったままになります。

金融庁の金融ガイドも、クレジットカードでの支払いを、代金をカード会社に立て替えてもらう後払いだと説明しています。後払いなので、カードを使った日には口座からお金が出ていきません。出ていくのは、あとの引き落としの日です。

そのずれのせいで、カードを使ったあとの残高には、もう払うことが決まっているお金が混ざっています。混ざっている額は、残高の数字だけを見ても分かりません。カードの利用明細を開いて、まだ引き落とされていない分を確かめる必要があります。

残高を見る日で、数字が変わる

同じ口座を、6 月 30 日にも見てみます。陽太さんが残高を見たのは、給料が入った 6 月 25 日の夜でした。カードの引き落としと家賃が済んだ 6 月 30 日の夜に見ていたら、残高は 198,382 円です。同じ 6 月でも、見る日が 5 日違うだけで、残高は 16 万円以上変わります。

6 月 30 日に残高を見ていたら、陽太さんは「パソコンを買っても 20 万円残る」とは考えなかったかもしれません。陽太さんのこの月は、給料が入った直後で、大きな引き落としがまだ済んでいない日でした。

自由に使えるお金のほうは、見る日が変わっても同じです。25 日から 30 日のあいだに、カードの引き落としと家賃のほかには出費が無かったものとして、2 つの日で同じ引き算をしてみます。

6 月 25 日に計算 6 月 30 日に計算
その日の残高 361,782 円 198,382 円
これから払う予定の金額 −223,600 円 −60,200 円
自由に使えるお金 138,182 円 138,182 円

6 月 30 日には、カードの引き落としと家賃がもう出ていっています。そのぶん残高は減っていますが、これから払う予定の金額も同じだけ減っているので、答えは同じ 138,182 円です。

陽太さんの問いに戻る

口座にある 36 万円のうち、使っていいのはいくらか。陽太さんの問いへの答えは、残高の 361,782 円ではなく、そこから次の給料日までの予定を引いた 138,182 円でした。

今回分かったことを、3 つにまとめます。

  • 残高は、今そこにあるお金で、使っていいお金ではない。もう行き先が決まっているお金が混ざっている
  • カードで払った分は、使った日には残高から減らない。引き落とされるまで、残高の中に残ったままになる
  • 使っていい額は、残高から次の給料日までに払う予定の金額を引いて出す。予定していた支払いが済んだだけなら、どの日に引き算しても同じ答えになる

教授のコメント

6 月 25 日の陽太さんだったら、15 万円のパソコンをいつ、どうやって買う計画を立てますか。その計画には、次の給料日までに出ていくどのお金を入れますか。

出典

  • 金融庁「基礎から学べる金融ガイド」冊子 3 ページ「家計管理」。収入と支出を項目ごとに把握し、収支のバランスを確かめる考え方を参照。https://www.fsa.go.jp/teach/kou4.pdf 。2026-10-08 に確認
  • 金融庁「基礎から学べる金融ガイド」冊子 21 ページ「クレジット/ローン」。クレジットとは代金を後払いにすること、カード会社に立て替えてもらうことであり、立替代金は預金口座から自動で引き落とされる、との説明を参照。https://www.fsa.go.jp/teach/kou4.pdf 。2026-10-08 に確認

本文の金額と日付、カードの締め日と引き落とし日は、架空の例です。締め日と引き落とし日はカードごとに違います。自分のカードの締め日と引き落とし日は、カード会社の案内で確かめてください。

本文の制度の数値は 2026-10-08 に確かめたものです。改定されることがあるので、申込や手続きの前に公式の記載をご確認ください。

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