社会人一年目のお金/第 2 回
給料日の口座に 36 万円。家賃とカードの引き落としを引いたら、使っていいのはいくら?
残高から次の給料日までに出ていくお金を引き、自由に使えるお金とカードの後払いの関係を知る

6 月の給料日、陽太さんの口座には 36 万円あります。欲しかったパソコンにも手が届きそうです。口座の出入りは、前の話から続けて計算しています。
6 月 25 日の夜、陽太は布団の上で銀行のアプリを開いた。給料が入って、残高は 361,782 円になっていた。
5 月の給料日に分かったことは、まだ覚えている。毎月入るのは、21 万円台だ。それでも、口座には 36 万円ある。
「パソコンを買っても、20 万円残る」
スマホのメモには、4 月に書いた「ノートパソコン 15 万円」の行が残っている。今週末に買いに行こう、と陽太は決めた。
そのとき、カード会社のアプリから通知が届いた。
「6 月 27 日のお引き落とし金額が確定しました 88,400 円」
8 万円? 陽太はアプリを開いて、利用明細を上から見ていった。5 月に買った自転車が 39,800 円。本棚が 12,600 円。同期と出かけた週末の旅行の、宿と電車が 36,000 円。どれも、買ったときのことは覚えている。ただ、カードで払ったあと、口座の残高は 1 円も減らなかった。だから、もう払い終わった気になっていた。
先月も同じことがあった、と陽太は思い出した。5 月 27 日に、口座から 98,600 円が引き落とされていた。4 月に家電量販店で買った電子レンジや掃除機、スーツの代金だった。あのときは給料日の 2 日後で、給料が入ったばかりの口座には 37 万円以上あった。だから、気にも留めなかった。
陽太はメモの「ノートパソコン」の下に、これから口座から出ていくお金を書き出してみた。
- カードの引き落とし(6 月 27 日): 88,400 円
- 7 月分の家賃(6 月 30 日): 75,000 円
ほかにもある気がした。電気とガスと水道、スマホの代金は、毎月初めに引き落とされている。食べるものも、買わないといけない。
アプリの画面の下のほうに、広告が出ていた。「最新ノートパソコン、月々 5,000 円から」
陽太は広告から目をそらして、もう一度残高を見た。361,782 円。この数字のうち、自分が使っていいのは、いくらなんだろう。
36 万円の行き先を書き出す
陽太さんは残高を見つめたままです。ここから先は私が、陽太さんのメモの続きを書いてみます。次の給料日の 7 月 25 日までに、口座から出ていくことが決まっているお金を並べます。食費と日用品は、これまでの 1 か月の目安で置きました。
| 金額 | |
|---|---|
| 6 月 25 日の残高 | 361,782 円 |
| カードの引き落とし(6 月 27 日、5 月に使った分) | −88,400 円 |
| 7 月分の家賃(6 月 30 日) | −75,000 円 |
| 電気・ガス・水道・スマホ(7 月初め) | −15,200 円 |
| 食費・日用品(7 月 24 日まで) | −45,000 円 |
| 次の給料日まで自由に使えるお金 | 138,182 円 |
口座にある 36 万円のうち、自由に使えるのは 14 万円足らずでした。 15 万円のパソコンの値段には届きません。
口座の残高は、今そこにあるお金です。自由に使えるお金は、その中から、もう行き先が決まっているお金を引いた残りです。陽太さんが見ていたのは残高で、知りたかったのは自由に使えるお金でした。
カードで払ったのに、なぜ残高が減らなかった?
カードで買い物をすると、お店への代金は、カード会社がいったん立て替えます。陽太さんがカード会社に払うのは、その後です。陽太さんのカードは、月末までに使った分を、翌月 27 日に口座からまとめて引き落とすカードでした。5 月に使った 88,400 円は、6 月 27 日まで口座に残ったままになります。
金融庁の金融ガイドも、クレジットカードでの支払いを、代金をカード会社に立て替えてもらう後払いだと説明しています。後払いなので、カードを使った日には口座からお金が出ていきません。出ていくのは、あとの引き落としの日です。
そのずれのせいで、カードを使ったあとの残高には、もう払うことが決まっているお金が混ざっています。混ざっている額は、残高の数字だけを見ても分かりません。カードの利用明細を開いて、まだ引き落とされていない分を確かめる必要があります。
残高を見る日で、数字が変わる
同じ口座を、6 月 30 日にも見てみます。陽太さんが残高を見たのは、給料が入った 6 月 25 日の夜でした。カードの引き落としと家賃が済んだ 6 月 30 日の夜に見ていたら、残高は 198,382 円です。同じ 6 月でも、見る日が 5 日違うだけで、残高は 16 万円以上変わります。
6 月 30 日に残高を見ていたら、陽太さんは「パソコンを買っても 20 万円残る」とは考えなかったかもしれません。陽太さんのこの月は、給料が入った直後で、大きな引き落としがまだ済んでいない日でした。
自由に使えるお金のほうは、見る日が変わっても同じです。25 日から 30 日のあいだに、カードの引き落としと家賃のほかには出費が無かったものとして、2 つの日で同じ引き算をしてみます。
| 6 月 25 日に計算 | 6 月 30 日に計算 | |
|---|---|---|
| その日の残高 | 361,782 円 | 198,382 円 |
| これから払う予定の金額 | −223,600 円 | −60,200 円 |
| 自由に使えるお金 | 138,182 円 | 138,182 円 |
6 月 30 日には、カードの引き落としと家賃がもう出ていっています。そのぶん残高は減っていますが、これから払う予定の金額も同じだけ減っているので、答えは同じ 138,182 円です。
陽太さんの問いに戻る
口座にある 36 万円のうち、使っていいのはいくらか。陽太さんの問いへの答えは、残高の 361,782 円ではなく、そこから次の給料日までの予定を引いた 138,182 円でした。
今回分かったことを、3 つにまとめます。
- 残高は、今そこにあるお金で、使っていいお金ではない。もう行き先が決まっているお金が混ざっている
- カードで払った分は、使った日には残高から減らない。引き落とされるまで、残高の中に残ったままになる
- 使っていい額は、残高から次の給料日までに払う予定の金額を引いて出す。予定していた支払いが済んだだけなら、どの日に引き算しても同じ答えになる

