財部(たからべ)教授のお金の研究室

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自国の硬貨を作っているのに、なぜアメリカはスペインの銀貨を使った?

硬貨の合計金額だけでは、日々の支払いに足りるか分からない

2026年10月1日に公開約5分で読めます

アメリカは自国の硬貨を作り始めた後も、スペインの銀貨を使っていました。自国で作れるなら、外国のお金はもう要らないように思えます。でも、作った硬貨が日々の買い物に使われるとは限りませんでした。

18世紀の終わりごろ、アメリカではスペインの銀貨が支払いに使われていました。1793年の法律でも、重さなどの条件を満たすスペインの1ドル銀貨を、アメリカの1ドル分として支払いに使えると認めていました。

この法律ができる前年には、アメリカ自身の硬貨を作る造幣局ができていました。それでも外国の銀貨が必要だったのは、なぜでしょうか。

1ドルあれば、どんな支払いにも足りる?

1ドルは100セントなので、手元に1ドル分の硬貨があれば、25セントの品物を買う金額は足りています。では、実際に硬貨で払う場面を考えてみましょう。

硬貨の組み合わせで払い方がどう変わるか、表で見てみましょう。現金だけで払い、店にはお釣りがないとします。当時の特定の店の記録ではなく、仕組みを説明するための仮の例です。

手元の硬貨 合計金額 25セントをお釣りなしで払える?
1ドル硬貨が1枚 1ドル 払えない。お釣りが75セント必要
25セント硬貨が4枚 1ドル 払える。25セント硬貨を1枚使う

同じ1ドルでも、25セント硬貨なら1枚で払えます。1ドル硬貨でも、店にお釣りがあれば買えますね。困るのは、買う人にも店にも小さな金額の硬貨がなく、差額を返せないときです。

国全体でも、硬貨の合計金額が十分なら安心、とはいきません。大きな金額の硬貨ばかりでは、小さな買い物に困ることがあります。

造幣局は、誰の注文で硬貨を作った?

実際のアメリカでも、小さな金額の銀貨が不足していました。米国造幣局の解説によると、19世紀初めには、銀行などが銀や金を持ち込み、希望する金額の硬貨にしてもらえました。銀行などが好んだのは大きな金額の硬貨で、そのため造幣局は、日々の取引に使う小額の銀貨をあまり作りませんでした。

造幣局に銀を持ち込む人と、店で少額の買い物をする人は、同じ人とは限りません。持ち込む人の希望に合わせて作っても、買い物に必要な種類の硬貨は十分にそろいませんでした。造幣局があっても、小額の硬貨は足りなかったのです。

作った1ドル硬貨は、どこへ行った?

小額の銀貨があまり作られなかったうえに、作られた1ドル銀貨も、国内の買い物には回らないことがありました。アメリカで作られた銀の1ドル硬貨は、海外との取引に使うために国外へ運ばれたり、銀そのものとして保管されたりしました。

銀貨には、支払いに使うお金と、材料の銀という二つの使い道がありました。海外への支払いに使えば国内の店には回らず、銀として保管している間も次の支払いには使われません。ですから、作った枚数だけ国内の買い物に使える硬貨が増えるわけではありませんでした。どれだけ作るかに加え、何ドル・何セントの硬貨を作り、それがどこへ渡るかも関わっていたのです。

外国の銀貨は、いつから使われていた?

アメリカが独立する前から、北米の植民地では、イギリスやスペインなどの硬貨が使われていました。なかでもスペインの銀貨は、含まれる銀の量が安定していたために好まれました。この銀貨は、当時のスペイン領だったメキシコなどでも作られていました。

ただ、外国の銀貨があっても、小額の硬貨は不足していました。植民地時代には、1ドル銀貨を切り分けて使うこともありました。外国の銀貨でも、大きな1枚のままでは小さな支払いに使いにくかったのです。

自国の硬貨が行き渡るまで、アメリカは、すでに使われていた外国の硬貨の一部を法律でも認めました。1793年の法律は、使える種類や重さ、いくらの支払いとして扱うかを定めています。スペインの銀貨については、1ドル銀貨に加え、小額の銀貨をどう扱うかも定めていました。

その後、硬貨を作る技術が進み、造幣局の拠点も増え、法律も変わりました。こうした変化によって、アメリカの小額の硬貨も、必要な量が出回るようになりました。1857年には、外国の硬貨を支払いに使えるとする法律が廃止されました。また、政府の窓口で、人々の手元に残っていた小額の外国銀貨を受け取り、アメリカの硬貨に作り直す仕組みも設けられました。

財部教授の30秒チェック

25セントの品物を買う例では、手元に1ドル分あっても、ちょうど払えず、店にもお釣りがなければ支払いが済みませんでしたね。今度は、みなさんが現金で払うときに確かめてみましょう。

  1. 払う金額に対して、手元の現金の合計は足りている?
  2. 手元のお札や硬貨で、ちょうど払える?
  3. お釣りが必要なら、相手は出せる?

今日の研究結果

アメリカが自国の硬貨を作り始めた後もスペインの銀貨を使ったのは、支払いに必要な硬貨が十分に行き渡っていなかったからです。小額の銀貨はあまり作られず、1ドル銀貨も海外へ出たり、保管されたりしていました。日々の買い物に使う小額の硬貨まで人々に届かなければ、外国の銀貨は要らなくならなかったのですね。

教授のコメント

財布の合計金額は同じでも、どのお札や硬貨があるかで、お釣りなしに払えるかは変わります。今の財布で、500円の買い物をお釣りなしで払えますか。

出典

  • 米国造幣局「The History of U.S. Circulating Coins」。1792年の造幣局設立、自国の硬貨の供給不足と外国硬貨の使用容認、19世紀初めの金銀の持ち込みと大額硬貨への選好、小額銀貨の不足、銀の1ドル硬貨の輸出・保管、供給の改善を確認。植民地時代のスペイン銀貨の使用、銀含有量の安定、小額硬貨不足に伴う銀貨の切り分けも確認。2026-10-13に、運営者が保存したページの本文で再確認。
  • 米国「1793年2月9日法」第1節(Statutes at Large、第1巻300〜301ページ)。指定した外国硬貨を借金などの支払いに使えるとする規定、スペインの1ドル銀貨の重さの条件とアメリカの1ドル分という扱い、小額銀貨についての比例した扱いを確認。1792年以降に発行された硬貨には検査・大統領の告示という追加条件もある。本文は具体的な硬貨1枚の使用可否を判定するものではない。2026-09-30に本文再確認。
  • 米国「1857年2月21日法」第1〜3節(Statutes at Large、第11巻163ページ)。外国硬貨の流通と法律上の支払いを認めていた旧法の廃止、スペイン・メキシコの小額銀貨の政府窓口での受け取りと作り直しを確認。交換制度の全容は扱っていない。2026-09-30に本文再確認。
  • メキシコ銀行「Historia de la moneda y del billete en México」(6〜7ページ)。スペイン領でのメキシコ造幣局の設立と現地での銀貨製造を確認。2026-09-30に本文確認。

表は、合計金額と払い方の違いを示す仮の例で、造幣局の解説にある特定の取引を再現したものではありません。また、輸出・保管された硬貨が国内の支払いには回らないという説明は、出典に記された使われ方から考えたものです。

本文の制度の数値は 2026-09-30 に確かめたものです。改定されることがあるので、申込や手続きの前に公式の記載をご確認ください。

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