コラム一覧/コラム
割り勘なら、全員同じ金額が公平?
人数で分ける場合と使った量で分ける場合から、公平の考え方を確かめる

同じ金額を払ったのに、どこか納得できない。そんな割り勘を、材料代 900 円の例から考えてみましょう。
友達と 2 人で、それぞれ自分の作品を作りました。材料代は例として 900 円で、あなたは板を 2 枚、友達は 1 枚使いました。割り勘にするなら、1 人 450 円ずつ。これなら公平でしょうか。
「同じ金額だから、どちらも文句はないはず」と思うかもしれません。でも、450 円ずつも、600 円と 300 円に分けるのも、公平だと考えられる場合があります。 同じ請求なのに、答えが変わるのはなぜでしょう。
900 円を、何で分けますか?
買ったのは、同じ値段の板 3 枚です。板の余りはなく、ほかに費用はかかりません。代金の分け方は、まだ決めていなかったとします。
人数で分けると、900 円 ÷ 2 人で 1 人 450 円です。一方、板の枚数で分けるなら、900 円 ÷ 3 枚で 1 枚あたり 300 円。あなたは 2 枚分、友達は 1 枚分を払います。
| 分け方 | あなたの支払い(2 枚使用) | 友達の支払い(1 枚使用) | そろえているもの |
|---|---|---|---|
| 人数で半分ずつにする | 450 円 | 450 円 | 1 人あたりの金額 |
| 使った枚数で分ける | 600 円 | 300 円 | 1 枚あたりの金額 |
支払う合計は同じ 900 円でも、何をそろえるかで、それぞれの金額が変わります。
どちらも計算間違いではありません。「同じにしよう」という言葉が指しているものが違うのです。人数で分けたときは、板を何枚使ったかを支払いに反映していません。枚数で分けたときは、全員の支払額をそろえていません。
「同じ金額」にも、理由がある
板を 1 枚使った友達から「使った分だけ払いたい」と言われたら、300 円という計算には筋が通っています。あなたが 2 枚使った分まで、友達が引き受ける必要はない、という考え方ですね。
一方、2 人で「材料をまとめて用意する費用は半分ずつ。使う枚数は違っても気にしない」と決めることもできます。一緒に工作を楽しむために用意したものとして、同じ金額を出す考え方です。
また、場面を少し変えて考えてみます。2 人で 1 本の接着剤を買って使い切ったら、どちらが何グラム使ったかは、もう分かりません。量を測れないものまで細かく数えようとすると、話し合いに時間ばかりかかります。人数で割る方法には、この手間を省けるという良さもあります。
こうした理由で、同じ金額を払う方法を選ぶこともあります。使った量で分ける方法だけに、公平という名前が付くわけでもないのです。計算の前には、何を同じに扱いたいかという判断があります。
私は、金額だけを見て「こちらが公平です」とは言い切れません。その金額になった理由を聞かないと、2 人が何を大切にして決めたかが分からないからです。
でも、使った分だけ払えば公平では?
今回の板は同じ値段で、使った枚数も分かっています。材料をそれぞれの作品に使うなら、枚数で分ける方法は説明しやすいでしょう。友達なら「きみは 2 枚、ぼくは 1 枚だから」と言えます。
ただし、同じ工作でも、2 人で 1 つの作品を作った場合はどうでしょう。片方が板を 2 枚切り、もう片方が 1 枚切ったとしても、それは作業を分担しただけかもしれません。切った枚数をそのまま支払いの差にすると、「たくさん作業したから多く払うの?」という疑問が出ます。
使った量で分けるには、その量が誰のために使われたかも関係します。最初の例で「自分の作品に使った」と条件を置いたのは、そのためです。数えられるものが見つかっても、それだけで負担の分け方が決まるわけではありません。
だから「何枚だった?」に加えて、「今回は何の費用を分けている?」も確かめたいところです。自分の材料代をそれぞれ払う話なのか、共同の作品を作る費用を出し合う話なのか。ここが食い違うと、同じ数字を見ても納得する答えは変わります。
じゃあ、話し合って決めれば何でも公平?
「半分ずつでいいよね」と言って、相手が黙っていた。それだけでは、相手も納得したかは分かりません。「少し違うと思う」と言える場があったかどうかも、金額と一緒に確かめる必要があります。
中学校の公民では、このコラムで言う「公平」に近い言葉として「公正」を学びます。文部科学省の学習指導要領の解説は、公民の教え方をまとめた資料です。そこでは、公正にもいろいろな意味合いがあると説明しています。
みんなが参加して決めているかという「手続き」の公正さ。それに、不当に不利益を受ける人をなくす、みんなが同じになるようにする、といった「機会」や「結果」の公正さです。支払額だけで公平さを考え切れないのは、そのためでもあります。
今回なら、「半分ずつなら 450 円、枚数で分けるなら 600 円と 300 円になるね」と、まず両方を見せられます。そのうえで「今回はどちらの考え方で分けようか」と聞けば、金額と理由を一緒に話せます。
意見が合わなければ、計算を何度やり直しても解決しないことがあります。そのとき話し合うのは、割り算の答えより、何をそろえるつもりだったかです。
財部教授の 30 秒チェック
分け方に加えて、その日に払えるかも見てみましょう。財布に 400 円しかない人に、450 円は払えません。
誰かと費用を分ける前に、次の 3 つを確かめてみてください。
- 何の費用を、誰がどれだけ使った?
- 今回そろえるのは、1 人あたりの金額? それとも使った量あたりの金額?
- 決まった金額を、全員がその日に払える?
約束がまだなければ、2 つ目は「未定」で構いません。どちらかに決める前に、話すべき点が見つかったということです。
今日の研究結果
割り勘で全員が同じ金額を払うことは、公平の考え方の一つです。使った量あたりの金額をそろえる考え方もあります。どちらを使うかは、費用の中身や、分ける人たちの話し合いと切り離せません。
これからは「同じ金額だから公平かな?」の一歩先で、「何を同じにした金額かな?」と確かめられます。

