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アメリカが日本の車に関税。払っているのは誰? 関税を納める人と負担する人
1 台の車で関税の流れを追い、国に納める人と、その重さを受ける人が同じとは限らないことと、アメリカが挙げる関税の理由を確かめる

アメリカは日本の車に関税をかけています。関税を国に納めているのは、アメリカに車を輸入した会社です。それなのに、日本から北米へ送る車の値段のほうが、2 割近く下がりました。
「アメリカが日本の車に関税」というニュースを見ると、日本の会社がアメリカにお金を払わされている、と思うかもしれません。
関税は、外国から入ってくる品物にかける税です。アメリカの法律では、関税を国に納めるのは、品物をアメリカに輸入した会社です。日本の車なら、車をアメリカに入れる手続きをした会社が、国に関税を納めます。
それなら、関税の重さはアメリカの側がすべて受けているのでしょうか。日本から北米へ送る乗用車の値段は、関税が上がった時期に 2 割近く下がりました。 納める人と、重さを受ける人は、同じとは限りません。
同じ 15% でも、重さを受ける人は変わる
日本の乗用車にかかるアメリカの関税は、もとは 2.5% でした。2025 年 4 月に 27.5% になり、日米の合意を受けて、2025 年 9 月 16 日から合計 15% になりました。この合意では、日本がアメリカに 5,500 億ドルを投資することも決まっています。
1 台の車で考えてみます。日本の会社が 20,000 ドルでアメリカに送っていた車があるとします(説明のために置いた数字です)。
関税が 15% に上がったとき、日本の会社には大きく 2 つの動き方があります。
- 送る値段を変えない:20,000 ドルのまま送る。関税の分だけ、輸入した会社の払う額が増える
- 送る値段を下げる:輸入した会社の払う額が、関税が 2.5% だったころと同じになるところまで、送る値段を下げる
下の表では、関税が 2.5% だったころを左に置き、この 2 つの動き方を並べました。
| もとの関税 2.5% | 15%・送る値段を変えない | 15%・送る値段を下げる | |
|---|---|---|---|
| 日本からアメリカへ送る値段 | 20,000 ドル | 20,000 ドル | 約 17,830 ドル |
| 関税 | 500 ドル | 3,000 ドル | 約 2,670 ドル |
| 輸入した会社が払う合計 | 20,500 ドル | 23,000 ドル | 約 20,500 ドル |
どの列でも、国に関税を納めるのは、アメリカで輸入した会社です。
真ん中の列では、輸入した会社の払う額が、もとより 2,500 ドル増えます。その分を店の値段に乗せれば、買う人の払う額が増えます。乗せなければ、輸入した会社や売る店の取り分が減ります。
右の列では、輸入した会社の払う額は、もととほとんど変わりません。そのかわり、日本の会社が 1 台で受け取るお金は、20,000 ドルから約 17,830 ドルに下がります。差の約 2,170 ドルが、日本の会社の受け取りから減った分です。ほかの条件が同じなら、日本の会社が値下げの形で関税の重さを引き受けたことになります。ただ、店で買う人への影響は、店の値札まで見ないと分かりません。
実際には、どちらが起きた?
2018 年にアメリカが中国などからの品物にかけた関税については、アメリカの経済学者たちが調べた研究があります。研究の要旨によると、関税の分はそのまま、アメリカでの輸入品の値段に上乗せされていました。研究者たちは、関税の重さはアメリカの国内の買い手が受けた、と結論しています。
2025 年の日本の車では、違う動きが見えました。日本銀行は、日本から北米へ送る乗用車の値段を、2020 年の値段を 100 とした数字(指数)にして公表しています。ドルなど取引に使ったお金のままの値段なので、円とドルの交換の値段の動きは入りません。この数字は、2025 年 3 月の 106.1 から、6 月には 86.8 へ、約 18% 下がりました。関税が 27.5% になった時期です。15% に下がった後は少し戻りましたが、2026 年 9 月も 91.0 で、2025 年 3 月より約 14% 低いままです。
日本の会社が、値下げで関税の重さを引き受けた可能性はあります。ただし、この数字は北米全体へ送る値段で、アメリカだけのものではありません。値下げの理由が関税なのか、誰がどれだけ重さを受けたのかまでは、この数字だけでは分かりません。分かるのは、同じ「関税」でも、2018 年の研究で見られた動きとは違い、2025 年には日本から送る値段のほうが下がった、ということです。
では、なぜアメリカは関税をかける?
アメリカの政府は、関税をかける理由を文書で説明しています。どの理由が正しいかを、ここで決めることはしません。説明されている理由を並べ、それぞれを確かめるにはどんな数字を見ればいいかを添えます。
| 政府の説明 | どの文書に書いてある? | 確かめるときに見る数字 |
|---|---|---|
| 輸入の車が、アメリカの車の産業と国の安全を弱めている | 車の関税を決めた 2025 年 3 月の大統領の布告 | アメリカの工場で作られた車の台数 |
| 大きな貿易赤字(買う額が売る額を大きく上回ること)が続き、アメリカの工場と仕事が減った。1997 年から 2024 年に、工場の仕事が約 500 万失われた | ほぼすべての国からの輸入に関税をかけた、2025 年 4 月の大統領令 | 貿易赤字の額、工場で働く人の数 |
| 関税は何十億ドルもの収入になる | 日米の合意についてのホワイトハウスの説明 | 実際に集まった関税の額 |
表の 2 つ目の理由(工場と仕事)と 3 つ目の理由(収入)は、同時には大きくなりにくい関係にあります。
たとえば、日本の車の輸入が 1 年に 100 億ドルあれば、15% の関税で 15 億ドルが集まります(説明のために置いた数字です)。そのうち半分の車が、アメリカの工場で作る車に置き換わったとします。工場の仕事は増えますが、関税のかかる輸入は 50 億ドルに減るので、集まる関税も 7.5 億ドルに減ります。
工場が戻るほど、関税の収入は減りやすいのです。「関税で収入が増えた」と「工場が戻ってきた」の両方のニュースを見たら、輸入された車の台数が減ったのかどうかを確かめてみてください。
なお、2025 年 4 月の大統領令のように、緊急事態に使う法律を根拠にした関税について、アメリカの最高裁判所は 2026 年 2 月 20 日、その法律は大統領に関税をかける権限を与えていない、と判断しました。車の関税は、国の安全を理由に輸入を調整する別の法律を根拠にしています。
財部さんの30秒チェック
関税のニュースを見たら、次の 3 つを考えてみてください。
- 税関に関税を納めるのは、どの会社?
- 記事に出てくるのは、日本から売る値段、輸入した会社が払う額、店の値札のどれ?
- 「国内の仕事を増やすため」というニュースなら、工場で働く人が増えた数字も載っている?
今日の研究結果
関税を国に納めるのは、品物を輸入した会社です。でも、その重さを誰が受けるかは、値段の動き方で変わります。2018 年の関税の研究では、アメリカの国内の買い手が受けたと結論されました。2025 年の日本の車では、日本から北米へ送る値段が 2 割近く下がりました。理由まではこの数字から分かりませんが、納める人と重さを受ける人が同じとは限らないことは見えてきます。アメリカの政府は、関税の理由として、国の安全、工場と仕事、収入を挙げています。理由ごとに、確かめる数字が違います。
「関税は相手の国に払わせるもの」と聞いたら、納める人と重さを受ける人を分けて考えてみてください。

